81話:紅き夜―日没と共に消える《死霊の魔物》―
《紅の魔物》は、俺に向かって、己の爪を振りかざす。
「ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァ!!!」
それを、俺は、
「邪魔だ!」
真デュランダルで受け止める。すると、爪は、全て、切断された。
「ヴャヴャヴャヴャヴャヴ!!!!」
悲鳴のような声と共に、怒りを露にする《紅の魔物》。俺としては、怒られる理由が見当たらないんだが……
「ヴィヴィヴィヴィヴィヴィ!」
巨体が、俺に向かって突進してくる。地面を抉りながら。風を裂きながら。
「ハッ!面白ぇ!来いよ、駄犬!」
俺は、昂揚する気持ちを抑えながら、《聖覇にして殺戮切断の剱》で迎え撃つ。黒い風を纏いながら突撃してくる魔物は、《紅》から《黒》に変わっていた。まさしく《死霊の魔物》。面白い!実に面白い。《聖覇にして殺戮切断の剱》が黒い風、死の風を纏う。
「潰れな!」
「ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィッヴィイッヴィヴィヴィ!!!」
死の風が、《死霊の魔物》の全身を貫きながら引き裂く。一方、こちらに来る衝撃も相当なものだ。圧倒的な質量。まるで、トラックと正面衝突しているのではないかと感じるほど。それほどまでに重い。腕力で巻き返せる限界を超えている。
しかし、それは、俺には関係なかった。
――そう、そうだよ。お兄ちゃん。お兄ちゃんには、《力》があるんだから!
不意に、脳裏に響くのは、聖の声。そう、俺には、力がある。膨大な、力――
「うぉおおおおお!」
「ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィいヴィヴィヴィヴィ!!!!!」
俺は、《聖覇にして殺戮切断の剱》を相手に突き立て、手を離し、腕力で、《死霊の魔物》を吹き飛ばす。
――グシャッ!
そんな音と共に、《死霊の魔物》は、半壊する。
「潰れやがれ、この駄犬がぁぁあああああ!」
俺の《力》によって、《死霊の魔物》は、跡形もなく消え去った。
「これで、六体潰せたか」
丁度、日が沈んだ所だった。
――悪霊討伐数:七




