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《覇》の古具使い  作者: 桃姫
不死鳥編
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76話:紅き夜―登る《紅き太陽》―

一日目《紅き太陽》

 俺は、不死鳥を探すべく、アーサーを叩き起こした。

「アーサー!」

「んぅ、もう、なぁに?」

寝惚け眼のアーサーは、いつものごとく全裸だった。だが、俺の知覚情報に、それはまったく入っていない。

「夜這い?」

アーサーの見当違いな発言を跳ね除け、俺は、説明を始める……前に、意識をはっきりとさせる。

――****――(しばらくお待ちください)

「痛い」

頬をさすりながら、アーサーは、嘆く。何をしてアーサーを起こしたかは、とりあえず置いておくことにしよう。

「それで?こんな朝っぱらから何の用かしら」

頬を膨らませて(ただ単に拗ねているだけだ。頬をさする痛いこととは関係ない)用件を聞いてくる。時刻は、三時。朝と言うにはまだ早いが……

「ああ、それが、かくかくしかじかなんだ」

「なるほど、かくかくしかじかね……ってわかんないけどっ!」

まあ、だろうと思った。

「あー、説明が面倒だが、一から説明するぞ。耳の穴かっぽじってよ~く聞け」

「耳の穴かっぽじるって、確か、耳の穴を綺麗にして、聞き漏らさないようにしろよ……みたいな意味だったかしら?」

外人面倒!この現状に適した四字熟語だろ。え?そんな四字熟語無いって?またまたご冗談を……

「そうそう、そんな意味だ。で、だ。まあ、俺がさっき寝ていたら、不死鳥が来て、こういったんだ『四日以内に妾を見つけなさい。見つけられたら不老不死の力をあげます。ただし見つけられなかったら、貴方の周りの誰かの命を奪います』って」

要約したが、こんな感じだったはずだ。

「えっと、ちょっといい?」

まあ、ツッコミどころ満載だろう。

「妾って?」

外人面倒!!

「妾ってのは、昔の自分のことを謙った言い方だよ。今の『私』と一緒だよ」

この説明で納得するだろう。

「謙る?」

外人面倒すぎる!!!

「えっと、まあ、相手を尊敬して、自分を下に言う言い方な」

「へぇ~……って、『命を奪う』?!」

反応遅ぇ……。

「そういうこった。つーわけで、お前に協力要請をしにきたんだ」

「それで、オレは、何をすればいいんだ」

口調が三百六十度変わる。……間違えた、百八十度だ。

「お前には、高木たちから、《火の鳥》に関する情報を出来るだけ聞き込んで欲しい。俺は、おそらく、今日から四日間、学校に顔を出さないと思う」

「了解した。それにしても、四日か」

「ん?どうかしたか?」

「いや、ただ。不吉だな」

四は死を彷彿とさせるしな。

「じゃあ、頼んだからな」

俺は、アーサーに告げると、足早に家を出た。まだ、外は暗く、日は昇っていない。俺は、そんな時間から、或る場所へと向かう。


 俺が向かったのは、俺がもっとも信頼している(アホ)のところだった。

――ガチャ、ガチャ

ピッキングで、鍵を開け、その家に無断で、不法に侵入する。しかし、これは、もはや、小さな頃からの慣れ事だ。

「エリナ!」

「ん?どうしたの?セイジン」

そう、月見里エリナの家だ。現在、住んでいるのは、エリナ一人。

「ちょっと、家に泊めてくんないか?」

「んー?いいよ」

いつものごとく、軽くオッケーが出る。

「悪いな」

「んー?ううん、別に。昔は、聖ちゃんと喧嘩しては、あたしんちに……」

少し気まずい雰囲気が流れる。

「昔は、な。今は、ちょっと事情が違ってな」

家にずっと居ると、親が何か言ってくるだろう。だとしたら、俺に何も言ってこないで黙認してくれる奴のところに泊まる必要がある。学校に行かずに、籠もれる場所は、ここだけ。

「そっか。好きにしていいよ、清二」

微笑みと共に、普通に俺の名を呼んだ(・・・・・・・・・・)

「すまんな。いつも」

俺は、エリナのこう言うところが好きなのだ。いつもは、うざがっているが。

「学校、行かないんでしょ。理由はどうする?」

「そうだな、何か適当に考えといてくれ」

「ほいほ~い。セイジンは、『女の子の日』のため欠席、と」

「待て、コラ」

やっぱりいつも通りか。少しいい雰囲気だったのに。まあ、それが、コイツらしいっちゃコイツらしいんだけどな。

「さて、と。もう四時だけど、寝よっか。三時間でも寝ないよりマシだしね」

そういって、俺を布団に引っ張り込む。

「お、おい。俺は関係ないだろ」

「そんなこと言わずに一緒に寝ようよ~」

馬鹿力で引っ張り込まれる。

「お、おい、ちょっ」

当たってる当たってる!何がとは言わないが、当たってる!ふにふにとしたものが。

「ふふん、抱き枕ゲット」

こ、これは、会長並みのアレだ。会長のは触ったことが無いから分からないが、見た目だけで、おそらくこれくらいと予測できる。

「じゃあ、お休み、清二」

「ああ、おやすみ。エリナ」

俺とエリナは、互いに互いを抱きしめるようにして、子供の頃のように寝たのだった。


 そして、陽は登る。《紅き太陽》が……


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