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73話:Side聖
Side聖
生まれつき、秀でた《第六龍人種》だった少女。名を、蒼刃聖。彼女には、兄が居た。名を、青葉清二。とある因果を隔てた世界に生れ落ちた聖は、生まれた瞬間、世界を滅ぼした。滅びの第六龍人種、などと言われる聖の力だ。
そして、彼女が、その力を御そうとしたとき、彼女の力は、暴走を始めた。
龍神の住む、因果の外れを含む、周囲の因果律をまるごと消し去る。それは、決して起こってはいけないこと。だから、彼女は、最後に、自分の力を使って、彼女自身を滅ぼした。
「――嗚呼、お兄ちゃん。ゴメンね……」
因果の果てで育ち、生れ落ちた瞬間に世界を滅ぼした彼女は、自身の兄を知るはずが無い。もっと言えば、兄が居たことすら知るはずの無い。なのに、最後に、そう、呟いたのだ。




