72話:Side白羅
Side白羅
白羅。彼女のみ、苗字と言うものが与えられなかった。彼女の力は、最年長の少年と同じ氷龍である。氷、とは、水と風の概念が混ざったものとされ、単属性のものよりも強いとされている。それ故、制御が難しい。しかし、彼女と同じ力を持つ少年は、彼女と数才ほどしか違わないにも関わらず、征したのだ。
それは、彼女にとって、多大なプレッシャーを与える要因となった。しかし強き力は、制御できないと死ぬ。それをはじめて、思い知ったのは、風見嘉樹が死んだときだった。自らの龍により、内から滅び、風となり消えた。
そして、もう一人、御せずに身罷ったものがいる。それについては、後ほど触れよう。
その二人の死を切欠に、彼女は、力を出すのを止めた。
それから、数年後。彼女以外の五人は、外の世界に旅立つことになった。
「俺とお前は大差ない。生まれながらにして、世界を殺したか、世界に嫌われたかの違いだけだ。俺は己の内にある氷龍を御してはいない。従えた。でも、お前は、御せる。同じ氷龍の第六だとしても、俺とお前は、別物だ。妹のためにひたすら力を手にした俺と違う。お前は、自分のために、その力を使うようにしろ。いつか、お前をその《銀の世界》から切り離す王子がやってくるだろう。その時、どうするかは、お前が選べ」
彼女がそう言われたのもこの頃である。
そして、彼女は、出逢ったのだ。彼女の王子さまに……。




