67話:血塗られた剱
そして、森を抜け、奥地、秘境にたどり着く……はずだった。しかし、そこには、秘境は存在しなかった。
「こ、これ……」
そう、そこは、血の池地獄を髣髴させる鮮血に染まりし戦場だった。
「おや、誰だい?まだ、僕のダインスレイフに血をくれるのは……」
ダインスレイフ、血を――くれる?
「くぅっ!同胞をよくも……」
ラクシアの怒りを傍目に捉えながら、俺の頭の中で、一本の線が繋がった気がした。
「クハッ!キミ等は吸血鬼だろ!何度殺しても生き返るじゃないか!」
「生き返るから殺していい、と言うわけではないでしょう!」
ラクシアと男の言い合い。しかし、俺は、あくまで冷静に、
「ダインスレイフって聞いたときは分からなかったが、そいつは、もしかして、ダーインスレイヴじゃねぇのか?」
ダーインスレイヴ。またの名をダインスレイフ。
「クハ、キミは物知りだねぇ!」
ダーインスレイヴ、意味は、「ダーインの遺産」。そして、その剱を抜いたが最後、血を吸い尽くすまで再び鞘にしまうことは出来ない剱。北欧に伝わる伝承に登場するヘグニの持つ剱。
「血塗られた剱。吸血鬼に血を吸い続ける剱かよッ!ケッ」
「な、なな、僕のダインスレイフをこんな奴等と一緒にするなぁああ!」
怒りを露にする男。
「何が違うってんだ?いや、違うな。テメェの駄剣より、吸血鬼の方が、よっぽどマシだろうぜ!」




