57話:白き龍
Scene清二
――|「聖覇にして殺戮切断の剱」《真デュランダル》!
手にあるデュランダルに《殺戮の剱》が合わさり生まれる。真のデュランダル。
「切り裂けッ!」
猛烈に風を纏い、空間を切り裂き、地面は割れ、雪は飛び散り、世界が揺らぐ。
――ズゥドォオオオオオオオオオオン!!!
これでも力を抑えている。さて、試し終わり、準備は整った。髪を切ってから三週間経った今、俺は、白羅と修行終了試験を始める。
「行くぜ、白羅」
「来なさい、清二。貴方になら、私は、全力を出しても大丈夫そうね……ッ!」
そして、姿が掻き消える。今、剱は一本しかない。この間のように、即時反応で、どちらかの剱で対応と言うのは出来ない。一本で、どの角度からの攻撃へも対処しなくてはならない。
「なら、こうすりゃあいいよなッ!」
地面に剱を叩きつけ、地面を切り裂き、剱を地面の下に入れ、捲り上げる。
「やるわね!でも、聖天氷華!!」
氷の槍が数十本生まれる。こんなこともできるのか!
「風を!」
俺は、氷の槍を死の風で切り裂いた。
「蒼天華皇!」
俺の周りを、氷の壁が囲む。そして、壁が迫ってくる。
「ウォオオラ!」
真のデュランダルを一気に振り回し、壁を全て切り裂いた。
「これも聞かないの?!なら、天爛氷月!!!」
そして、世界は、銀色に包まれた。降り注ぐ雪。その雪に触れたものは全て凍りつく。現に、その辺にあった、木々は、既に凍てついていた。俺の足も凍りだす。肩も、腕も。だが、気合で跳ね除ける。凍りついた箇所が悲鳴を上げるも、全身から力を振り絞る。
「ハァアアアア!」
気合を漲らせ、《聖覇にして殺戮切断の剱》を振り上げる。
――ドォオン!落ちてきていた雪が全て切り裂かれ、俺の頭上に穴が開いたようになる。
「嘘、何て力なの……」
驚愕の様子の白羅。だが、俺は、追撃を入れる。
「穿て!」
世界に風穴を開ける勢いで、《聖覇にして殺戮切断の剱》を突き出す。
「……ッ氷魔百希穿!」
慌てて我に戻り、防御に転じ、いや、攻撃か……!氷の薙刀が生まれる。そして、剱と薙刀がぶつかる。
「グッ!」
「クッ……!」
ぶつかり合いの最中、俺は、白羅の背後に、ありえないものを見た気がした。それは、―――白い龍。
「なんだよ、あれ……ッ!」
アレが、白羅の中にある力……?!ありえないほど強大だ。化け物。しかし、何故だか、心が躍る。
「ふっ、ふはッ、フハハハハハハハハハハッハハッハハハハハ!」
気が付けば、俺は、笑っていた。それも、大声で。
「な、何?」
白羅は、驚きのあまり、目を丸くして動きを止めている。
「良いねェ、良いぜェ。マジ最高だねェ!おいおいおい。ドラゴンかよ!血が騒ぐなァ!おい!」
もはや、キャラ崩壊で、どこかの問題児っぽくなっているが、仕方ないだろう。これが興奮せずに居られるか!最高じゃないか。龍。そう、龍を殺す。これほどまでに燃えるシチュエーションがあるだろうか。まるで戦闘狂のように、叫び、狂いながら《聖覇にして殺戮切断の剱》を振るった。
瞬間、世界が、割れた。銀色の世界は、二つに引き裂かれ、そこから元の空間へと戻っていく。そして、一気に跳躍。力を軽く込めただけなのに、天高く、龍よりも高く跳んだ。これが、俺の中にある力……?
「なっ、まさか、蒼刃の力……」
「潰れな、白い龍さんよォ!!!」
俺の空間をも切り裂く一撃が、白羅の後ろの龍を、いともたやすく切り裂いた。
《ば、馬鹿な。我を切り裂く一撃など》
「全てを切り裂く剱。それがこの、|『聖覇にして殺戮切断の剱』《真デュランダル》だぜ」
《ま、まさか、貴様!奴の、奴の家系のものか!》
奴?まあ、なんにせよ、一件落着か?そして、意識が薄らいでいく。




