48話:呪い
Scene 白羅
幼い私は、私の中にいるこれを制御できなかった。いえ、今ですらできていない。これは忌むべき呪い。
私が居るのは、白銀の世界。そして、目の前に居るのは、――白き龍。
《どうして、我の力をもっと使わない》
「貴方の力が強すぎるからよ」
《だが、我の力を使わなければ、御することは難しい》
「知っているわよ、そんなこと」
《御せないのだとしたら、我から離れることは出来んぞ。永遠に、この世界に囚われ続ける》
「もはや、呪いね」
そう、呪い。完全な呪い。もはや、私は、この銀色の世界から抜け出すことの許されない存在だ。
《生まれながらに『龍』を宿す、第六の少女よ。お前を、この世界から解き放つことができるのは、お前だけだ。――我をどうしたい》
私は、貴方を、――
《さて、修行とやらをやるのだろう。さっさと、意識を表に戻せ。行くのだ、『氷龍の第六』よ》
そう、私は、中に龍を宿す、「氷龍の第六――」。この世界を忌み嫌い、別の世界に憧れる龍人。龍の神ではなく、龍の――。
私の意識は、先ほど、聖剱を凍らされて、目を見開いている少年の方へ戻った。
「氷千帝華。全てを凍てつかせるための力。忌まわしき《氷龍の息》よ」
そう、私の内にある龍の力。
「マジかよ。そんなことも出来んのか……」
清二は、私に驚きの表情を見せる。新鮮な驚く顔。先ほどまでのキリッとした顔と今のポカーンとした顔のギャップが妙に愛らしい。
「私の呪いは、人間の力ではどうすることも出来ないようなものなのよ」
そう、人対龍。龍を前にして人は、あまりにも無力。幾人集まろうが、一撃で、殺される。
「つまり、」
にやりと、人の悪そうな笑みを浮かべる清二。
「その力に打ち勝てれば、俺の修行は、成功ってわけか?」
妙に勝気で、自信たっぷりの台詞だった。




