44話:剱の修復依頼
この間の戦いによって、折れてしまった《選定の剱》。アーサーは、それの修復を手伝って欲しいと、生徒会室に依頼をしてきた。突然のことだ。転校初日に、いきなり。
「それで?聖剱なんてどうやって直すの?」
会長は、アーサーに問いかける。
「オレは、直接会ったことは無いが、龍神と言うのがいるらしい。そいつが、聖剱を直せると聞いた」
「龍神、ですか?」
副会長は、ぽかんと口を開けたまま停止する。今気づいたが、今日は、副会長、サイドポニーではなくポニーテイルだ。
「失礼ですが、本当に居るんですか?」
まあ、もっともな質問だろう。俺も正直信じられない。
「ああ、居るはずだ。場所は、オレもよく分かってないが、何でも、因果律の狭間とか」
因果律?
「因果律って言うとアレか。何か事象が起こることには、何らかの原因がある。そして、原因と事象の関係は、決して覆らないって言う」
「そう、それの、もっと大きくなった版だ。全ての、世界そのものの事象から分かれる、可能性の一つ一つが集まったものが因果律って言うらしい」
なるほど、世界そのものを構成する確率ということか。ギャルゲーで言う選択肢とルートみたいなものの重なり。分岐点とそこを始点にいくつも枝分かれするはずのルートのうちのどれを通ったかが因果律となる。要するに、絶対に起きなくてはならないような歴史の重点から枝分かれを繰り返し、今の世界が成り立っていると言える。例えば、恐竜の絶滅、地殻変動、国の成り立ちみたいな大きなことから、缶を道端に捨てる、石を蹴っ飛ばす。もっと言えば、あの子と話す、話さない、一歩踏み出す、踏み出さない、右足を踏み出す左足を踏み出す。そんなレベルの話まで、全てが因果律と認定される。そこでどちらを選ぶかの選択肢とそれによって出来たルートが世界を構築する。つまり、分岐しだいでは、いくつも世界が似たような世界が存在することになるのだが?そして、それを基に考えると、因果律の乱れは、一つの世界で起きると、その周りの世界にも影響を及ぼしかねない。と、まあ、因果律に対する認識は出来たが、因果律の狭間と言うのは?
「因果律の狭間って言うからには、因果律のおよばない、因果と因果の間なんじゃないのか?」
「おいおい、どうやっていくんだよ、そんなとこ」
因果と因果の間に行くとか不可能だろ。
「確かに無理ですね」
副会長が俺の意見に続く。
「んなこと言ったってなぁ」
アーサーが、溜息混じりに言う。
「大体、戦闘経験も少ないオレの聖剱が折れるなんて、まず無かったからな」
「まあ、行きかたに関しては、聖王教会に聞くとして、私等のメリットは?」
会長がアーサーに聞いた。
「無論、メリットはある。龍神は、聖剱だけでなく古具にも詳しい。そこの金髪君が新しく目覚めた力についてもわかるかもしれない」
「そういうこと……」
なるほど、こちらにも特って分けか。
「セイジの力についても分かるかもしれないしな」
「清二君の力?」
「青葉君、キミも何か力に目覚めたのかい?」
そう言えば話していなかった。
「別に目覚めたとは違うッスね。まあ、なんつーか。あれッス」
適当にしどろもどろ言う。
「あれって何よ?」
「えっと……」
――貴様等か?教会の使いは?
俺が言葉を発しようとした瞬間に、声が響いた。
――案内しよう、我が城へ




