40話:月見里恵李那
「月見里恵李那で~す」
まず、入ってきた編入生の一人目。一人ずつ入ってきて紹介するようなので、まだ、二人目の姿は確認できない。しかし、一人目からして、俺は、圧倒的な疑念を抱いていた。エリナ。コイツとは、嫌な、思い出しかないわけだが。
「おっはろ~、セイジン!」
俺のことを「セイジン」と呼称するコイツとは、数年前に会うことがなくなった幼馴染だ。聖の件の後、居なくなっていたのだが。ちなみに、こいつのあだ名のせいで、俺の小学校のあだ名は「○○星人」だった……。今思い出してもむかつく。
「宇宙の彼方まで吹っ飛びやがれ!」
ちなみに、俺が、貧乳派になった理由は、コイツが巨乳だから、巨乳は、うざいと言うイメージが執着しているためである。
「あっはっは、自分の名前とかけた渾身のギャグ?」
星人と宇宙、な。
「ギャグを解説するとはいい度胸だな!」
昔のようなやり取り。
「死ね!」
「おっと、その程度の蹴りがかわせんと思うてか!」
俺とエリナの死闘(私闘)は、数分に亘り、結果、引き分け。
「くっそ、二千五百二十一戦二千五百十九分け、一勝一敗!」
まさしく互角の勝負だ。ちなみに一勝一敗の方は、最初にやったお絵かき対決と暗記対決である。どちらでどちらが勝ったかは言うまでも無い。と言うか、言いたくない。強いて言うなら、美術の授業はなくなればいい。
「お、おい、青葉。自重しろ。お前のテンションがいつもと違いすぎてついていけん」
「知るか。こいつだけは、こいつだけは……」
止めてくれるな高木!コイツだけは、倒さなくてはならんのだ!
「セイジン!と言うわけで、プロフィールを解説してください」
急に、アナウンサーのような口調で、俺に話題を振る。
「月の見える里と書いて『やまなし』。難読な苗字だ。恵む李の那覇で『エリナ』」
「あっは~、最後の『那覇』は絶対適当だ~」
俺の普段見せない表情にエリナ以外は意外と驚いていた。
「B/90・W/61・H/91」
「何で知ってんね~ん!」
似非関西弁で、ツッコミを入れるエリナ。ちなみに、値が正解かどうかは、……神とエリナのみぞ知る。
「年齢は、十六」
「そーだねー。まだ、誕生日じゃないし~」
「へその右下のどちらかと言うと腰に近い辺りにほくろがある」
「お、おう。覚えてたの?セイジン……」
コイツの特徴は大概覚えている。
「もう、えっちいなぁ~」
ガキの頃から一緒だっただけに、裸なんて見慣れたもんだからな。性的感情は無い。一切無い。皆無だ。
「ったく、大分時間を喰ったな。次だ、次」




