38話:兆候
外出中に、知り合いにあう確立なんて、どのくらいだろうか。まあ、家の近辺だったら知り合いに会う確立は相当高いのかもしれない。しかし、これは、また……
「清二君」「青葉君」
二人から同時に声がかかった。声の主は、無論、会長と副会長。いや、偶然だ。休日まで、この二人と会う気はさらさら無かったのだが。遭ってしまったものは、仕方が無い。
「ん?カナタさんに美園さん。それに青葉君も。あれ、今日って会議ありましたっけ?」
さらに偶然。篠宮も合流した。
「いや、会議とかは無いよ。ぜんぜん」
会長の苦笑いしながらの受け答え。まあ、この面子がそろえば、こうなるか。
「にしても、この面子が揃うって、何かの予兆っぽいっスね」
そんな、ふざけたことを言ってみると、副会長がバツが悪そうに、
「い、いえ。まあ、何かが起こりそうと言うか、起こっているというか……」
「ん?何かあったっけ?」
会長が副会長に問う。副会長は、まあ、苦笑いと言うにはぎこちない、作り笑いをしている。
「明日、五人ほど編入生が来るらしいのです。その対応が……」
それにしても、この時期に、五人って言うのは、なかなか多い……と言い切れないのが、我が三鷹丘だ。
「五人の内、二人が、青葉君のクラスに。一人が、うちのクラス。後は、別クラスですね。まあ、個人情報の関係上、それしか分かりませんが、まあ、親切にしてあげてください、青葉君」
二人か。かったりぃ。
「今、かったりぃとか思ったでしょ。清二君。ダメだよ」
「は、はい」
何気に鋭い、会長である。




