35話:平和の聖王
Scene清二
俺は、アーサーと供に、篠宮のほうへ向かった。直線距離は、そこまで無かったが、実際の距離だとそこそこ遠い。その遠目の距離を、俺とアーサーは、屋根から屋根へ飛び移ったりで、ショートカットを使って、なるべく急いだ。ちなみに、最初に屋根の上に飛び乗るとき、なかなか出来なくて、アーサーに引っ張り上げてもらった。なかなかに恥ずかしい体験だ。
そして、篠宮が、ガウェインと話をしているところに出くわしたのだった。アーサーは、漆黒のコートを纏い、ガウェインの方へ向かう。俺は、篠宮の方へ。
「どうなった?」
「無論、僕の勝ちさ」
どこか晴れ晴れしたような篠宮の顔。
「ったく、手加減しやがれ」
ガウェインの嫌みったらしい、それで居て本当にそう思っているわけではなさそうな言葉。
「ゴメン。でも、わかったよ。君らの思いも。そして、ランスロットって奴が一番悪いことも」
これは、アレか。死闘の果てに友情を掴む、ラノベによくある展開のやつか。
「ふむ、一度、調べるべきだとは、思ったぜ。十年前の件。俺は、教会に戻って調べてみる」
「そうかい、アリガト」
何かよく分からないが、こっちも一件落着、か。
「アーサー。テメェは、どうする」
「オレは、セイジのところで厄介になる予定だ」
アーサーの答えに、ガウェインと篠宮が、驚いていた。
「せ、聖剱使いを家済ませる気かい?」
まるで正気を疑うかのような問われ方。
「あのなぁ、コイツが家に居ようが居まいが関係はねェよ」
そもそも、俺は、聖剱に触っても平気だし、特にこれといって異常、危険も無いだろうし。
「と、言うわけだ。ガウェイン。達者でな」
「まるで、もう会わないみたいな言い方しやがって……。まあ、その内、もうまた会うだろ」
そうぼやきながら、ガウェインは、どこからとも無く現れたトリスタンと供にここを去った。
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