32話:四本の剱
鼓動が早足になる。
「な、何をする気!早まっちゃダメよ!」
アーサーは、思わず女口調になっていた。それは、俺のやろうとしていることが自殺行為以外のなんでもないからだろう。
「《因子》を持つもの以外が触ると、触れた瞬間に、全身を剣で貫かれたような痛みがして、死に至るわよ!」
「触れた瞬間、か……」
俺は、にやりと笑いながら、銀色の柄に触れる。
――シャララララ
曲を奏でるかのような音がデュランダルから発せられる。これが、《切断の剱》(デュランダル)。鏡のような刀身が、傷だらけの俺を映す。綺麗な刀身だ。俺は、《切断の剱》と《殺戮の剱》の二本を持ち立ち上がる。空を見上げると、向こうの方で空が黒く染まっている。篠宮の方も、もうじき決着らしいな。そう思いながら、構える。
「これで、二対二。ハンデなしの勝負だぜ」
「う、嘘……。本当に《切断の剱》を持って立ち上がっている、何て……」
動揺している。
「次の一撃で、すべてを決めよう」
「……ッ!」
俺の言葉で動揺を断ち切った。そして、アーサーも構える。
「行くぜ」
「行くわ」
完全に声が被る。それを合図に、同時に駆け出した。
――シャリィイン!
四本の剱が交錯した。そして、一本が折れて地面に突き刺さった。もう一本が、宙を舞い、そのまま地面に落ちた。その二本は――黄金の剱だった。
「俺の勝ちだな」
「ええ、わたしの負けよ。セイジ」
俺は、アーサーを抱き起こす。折れた剱は《カリバーン》だったようだ。
「篠宮の奴、どうなったかな……」




