29話:ローラン
「じゃあ、残っている聖剱は何だ?」
「え?」
え?じゃねえだろ。
「七席五人ってことは、剱は七本。人数は五人。お前の言った通りなら、お前が《カリバーン》《エクスカリバー》。ガウェインは《ガラティーン》。トリスタンが《カーテナ》。ゲオルギウスが、《アスカロン》。ランスロットが、《アロンダイト》。ってところだ。残っている有名どころの聖剱は、《天叢雲剣》なんかが在るが、聖王教会って名前からして、東洋の聖剱はないと思われる。それを踏まえて、《デュランダル》が怪しいと思うんだよな」
俺の推論にやれやれと肩を竦める。
「やっぱり、お前の推理力は恐いぜ、セイジ」
男口調で、語るアーサー。
「オレたちの中でも、ローランは、いるのかいないのか分かっていないんだよ。だが、席は空席。だから、デュランダルは、オレが持っている」
そう言って、ゴルフバッグを指す。まさか、デュランダルがあるのか?
「まあ、そう言うわけで、ローランは不明なのよ」
再び女口調。
「そうか……。そう言えば、ランスロットは?」
「ああ、あの金髪君の仇らしいんだけど……。あの後、気になって聞いてみたら、わたしが入る前に、古具狩りを行って、関係ない一般人まで殺して、いなくなったらしいわ」
「篠宮の仇?」
仇って何だ?
「何でも、聖剱使いに殺されかけたとか、殺されたとか」
何か、複雑な事情がありそうだな。まあ、篠宮には、篠宮なりの事情があるのだろう。今は、触れないでおくか。
「俺は、そろそろ寝るか」
「え?まだ、晩御飯も食べてないし、六時だけど?」
「いいんだよ」
そう言って、俺は、新しい俺の部屋に行って、寝たのだった。
深夜一時。寝静まったこの時間に、俺は、アーサーの部屋にいた。何故か、って?そんなのは決まっている。聖剱を拝見するためだ。俺は、こっそり入って、ゴルフバッグを開けた。そして、そこに入っていたのは、二本の黄金の剱と一本の銀色の剱だった。
「これが、デュランダル」
あまりの美しさに、俺は、その剱を手にとってしまった。確か、《因子》を持つもの以外が触ると拒絶されるとか言っていた気がしたが、今のところは、大丈夫だ。しかし、胸の奥深くで、何かが疼くような気配がした。
《これは、デュランダルか?》
俺の剱が問いかける。多分、デュランダルだ。
《珍しいことが起きるものだ。ん?そろそろ、聖剱使いが目覚める。戻しておけよ》
俺は、デュランダルをバッグに戻し、部屋を去った。




