26話:お約束
そう思って、外に出たのはいいが、かなりきつい。おんぶは相手がこちらをしっかり掴んでいないときついということを思いさらされた。バッグを前に提げ、アーサーを背負い、その下にゴルフバッグを当てるという奇妙な格好で、アーサーを運んでいたんだが、
「こいつんち知らねぇじゃん」
大きな壁にぶつかった。仕方ないから、家に連れてこう。
「ただいま」
寝静まった我が家に到着した。まず、二階にある、俺の部屋に、荷物を降ろし、玄関の鍵を閉めておく。戸締りはしておかないと無用心だからな。そうして部屋に戻ったのだが、
「熟睡してやがる……」
アーサーは、いつの間にか、俺のベッドに上がりこみ、布団まで掛けて寝てやがった。図々しい。仕方ないから、俺は、床に予備の布団を敷いて寝ることにした。
まどろみの中、何か柔らかいものが、手に触れている。ふにゅふにゅとした感触。ああ、ゲームでよくある展開なら、胸だろうな……。ふにゅふにゅ。
「ぁん」
などという、やらしい声が上がるのもゲームではよくある。現実でもよくあ……ねぇよ!思わず起きる。目の前には、肌色……。
「はぁ?」
「ふぁあ」
欠伸をするアーサー……。ギシギシと階段を上がる音。様々なことが同時に起こる。だが、あれだ。慌てると絶対に失敗する。落ち着こう。
「セ……セイジ?」
「お、おはよう。アーサー」
一応、挨拶をする。さて、今からどうしよう。止まる足音。扉が開く。
「ほら、清二!起きなさ……」
フリーズする母。ええ、そりゃフリーズしますわ。息子と知らない女が部屋で一緒に寝てたら。
「……女体化篠宮君?」
訂正、フリーズしたのは別の理由からだった。
「あ~、その、何だ?こいつは、」
「アーサーと申します」
アーサーが自己紹介をした。
「え~と、アーサーさん?」
「はい?何か」
「何故に、うちの愚息と一緒に寝ていらっしゃるのでしょう?」
ですよね~。その質問来ますよね……。
「……何故でしょう?私、昨日の夜の記憶がないんですよ」
にやりと俺のほうを見るアーサー。「計画通り」ってか?
「……」
母、絶句。いろいろとまずい感じになっている。結論、あれだろ、慌てたらダメだけど、冷静でもダメって言う。




