23話:恨みの聖剱
Scene真琴
僕は、廊下を一心不乱に駆けていた。とにかく、全力で。聖剱使い。奴等を殺すために。仇を討つために。
僕が、奴等を見つけられたのは、偶然に近い。いや、運命だったのかもしれない。黒いコートを着た三人組。間違いない。あのときの、あの男と同じ格好だ。人気がないのは幸いだ。ここで、奴等を殺せる。足に力を込めた。本気の一撃。隙を突いた一撃だ。
――ドンッ!
ゴロゴロと転がる男。あいつではないにしても、あいつと同じ、聖剱使いだ。万死に値する。
「何者だ?」
金髪の少年の問い。僕は、答える。
「十年前、お前等、聖剱使いに殺されそうになった男だよ」
「十年前……?ガウェイン、トリスタン知っているか?」
少年は、明らかに知らないであろう年齢だ。周りに問うのは正しい。そして、僕が蹴った方ではない男が口を開いた。
「まさかとは思うが、ランスロットの被害者か?だったらお門違いだ!今は、奴は、聖王教会円卓の騎士にいないどころか、聖剱使いですらねぇよ!」
ランスロット?
「誰が僕らを襲ったかが問題じゃないんだ!お前たち聖剱使いに、何の罪もないのに殺されそうになった、殺されたことが問題なんだ!」
「おいおい、こいつ、話聞く気ないだろ……」
そんなもの毛頭ない。僕は、今まで、こいつ等を殺すためだけに、生きてきた。この町に来たのだって、古具所持者が多いこの町には、こいつらが来る可能性が高かったからだし、生徒会に入ったのだって、こいつ等の相手をさせてもらえるからだ。
「今、僕は、ここでお前達を、殺す!」
「アーサー、どうするよ?」
「ここは、君らに任せるよ。オレはパスだ」
長い金髪をなびかせながら、アーサーは下がった。
「チッ、夕方だと分が悪いんだが、やってやるか……。聖王教会円卓の騎士、ガウェインだ。行くぞ!」
男は、自分の背丈ほどの大剣を振り回す。僕は、全力で相手をする。
「《全力解放》」
全身の筋肉が強化し、皮膚も硬化する。速度も上がり、威力も上がる。それが僕の《魔王の力》。
「オラァ!」
「当たらないよ!」
僕の打撃。ガウェインは、顎を強打。
「痛ぇな」
僕に驚愕が走る。絶句。人体の急所の一部だ。顎を揺らされれば、脳に伝わり、脳震盪を起こす。なのに、こいつは、強化された僕の一撃を受けても、痛いの一言で済ませた。
「これなら、どうだっ!」
僕の追撃。それを、
「ハッ、潰れろ」
鼻で笑い、剣で防いだ……。
「これで終わりだ」
ヤバイ。剣が、僕に……。
――キィン!
甲高い金属が響いた。僕は、恐る恐るに目を開ける。




