20話:予兆
その帰り。俺は、妙な奴を見た。金髪に緑色の瞳を持った奴。体はコートに隠されていて分からない。
「旅行に来ただけだが、まさか、《殺戮の剱》を持つものを見つけられるなんて、運がいい」
「なっ……」
俺は絶句した。何故、先ほど目覚めたばかりの俺の力を知っているんだ。こいつは一体何者だ。
「オレは、聖王教会円卓の騎士の一人、アーサーだ」
流暢な日本語でそう語った。……アーサー、だと?円卓の騎士でアーサーと来れば、誰でも分かる。伝説の騎士王、アーサー王だ。風が吹き、コートがめくれる。下に見えたのは、二本の剣。あれは、まさか……。
「テメェが、アーサーってことは、その剣は、《カリバーン》と《エクスカリバー》ってとこか?」
「ん?推測で言うあたり、オレたちのことを知らないのか?|《聖王の剱》《エクスカリバー》と|《選定の剣》《カリバーン》を知ってるってことはそれなりの知識はあるようだが……」
しかし納得いかない。二つあるということは、古具を使うものではない。いや、可能性としては、少しはあるかもしれない。つーか、二本とも現存って言うのもおかしい話なんだが……。
「オレは七席五人の円卓の騎士の一人さ……」
七席?五人?
「おいおい、中途半端な設定だな?円卓の騎士は十三席十二人だろ?」
「オレたちはそれに倣っているだけだ。実際の円卓の騎士とは人数もメンバーも違う。といっても、違うのはゲオルギウスの奴一人だが」
ゲオルギウス?そうか、こいつら、
「聖剱使いってか?」
「へぇ。今のだけで分かるとは……。古具使いも捨てたもんじゃないな」
「ゲオルギウスは、アスカロンって言うドラゴンスレイヤーの聖剱使いだ。おそらく、残りの三人は、円卓の騎士と同じ。つーことは、簡単に予想がつく。違ぇか?」
俺の推論を語る。
「正解。なかなかやるねぇ~。うん、ガウェインとトリスタンも一緒に来てるんだ。そのうち、キミを殺しにいくかもしれないからよろしく」
アーサーはそれだけ言うといなくなった。殺しに行く、か。おそらく、《殺戮の剱》が原因なのだろう。あいつが会ったときにそんなことを言っていた。はあ、厄介な話になったな。とりあえず、会長に明日報告するか。




