15話:解放
苦難の末、ようやくたどり着いた生徒会室。そこには、既に会長と副会長が居た。
「あら、清二君遅かったのね……。真琴と粟木さんも一緒?」
「ま、まあ」
俺の曖昧な返事を聞いて、まず、粟木を席につかせた。
「青葉君、粟木さんとの自己紹介はしましたか?」
副会長の質問。自己紹介はしてないな。
「してないみたいね。じゃあ、清二君のために自己紹介からしてくれる」
会長が粟木に言った。
「はい、粟木久々李です!学年は一年。古具は|《疾風の足》《スピード・スピード》です!」
語尾に感嘆符がたくさん付くような元気さで語る。
「決め台詞は『誰よりも迅くお届けいたします、この愛を』です!」
もはや、キャッチコピーだよ、それ。しかし、決め台詞か。
「会長は決め台詞とかあるんですか?」
「あるわけないでしょ」
「『月に代わってお』」
「ストーップ!」
止められた。何か変なことを言っただろうか。
「いろいろと危ないから、それはひとまず置いておきましょう」
「今のは、かろうじて、僕も知っていたよ」
篠宮も知っていたらしい。前回のボケは、会長しかツッコんでくれなかったからな。やはり、皆が知っているネタのほうが食いつきがいいのだろうか。
「それで、今日の用件ですが、粟木さん。一体、何用ですか?」
副会長の問いに、粟木は肩を落とし、さっきまでの元気が消し飛んだかのように喋る。
「はい……。実は、最近、あたしの古具が言うことを聞かなくて……」
アーティファクトが言うことを聞かない?そんなことがあるのか?
「それは、自分の意思とは関係なく力が発動するの?それとも、自分が発動した以上の力が出るって感じ?」
会長が確認を取る?
「えっと、後の方です……」
「それなら、力の溜まりすぎね……。一度|《一時解放》《ファースト・バースト》したほうがいいわね」
ファースト・バースト?
「《一時解放》というのは、力を一時的に引き出すことを言うんだ。他に|《全力解放》《フル・バースト》と|《最終解放》《ラスト・バースト》と言うものも存在しているよ」
篠宮の解説。なるほど……。
「《全力解放》は、力を一時的に限界まで引き出すことってところか?《最終解放》は、それこそ文字通り、最後の解放。限界を超えた力を一時的に引き出すが、二度と古具が使えなくなるってところか?」
「相変わらずの理解力、尊敬するよ」
「まあ、《一時解放》や《全力解放》にもデメリットはあるんだろう?例えば、数時間、古具が使えなくなる、みたいな」
「理解が速くて助かるよ。その通り。古具によって、使えなくなる時間、日数はバラバラだけどね」
なるほど。使い勝手が悪そうだな。緊急時にしか役に立たないだろう。連戦時は、使えない。




