epilogue:《聖》の古具使い
ダリオスは死んだ。俺たちの長い一夜は、塔の崩壊、そして時が動き出したことによって終わりを告げた。さあ、さて、それから、日が昇った、その日の話をしよう。
「うっす、青葉!」
高木がテンションの高い声で俺に話しかけてくる。うっとおしいと思いながら、
「何だ、高木」
「何か機嫌悪いな。それに、うん?なんか、髪染めたか?蒼っぽいぞ」
《蒼刻》の後遺症として、蒼がまだ身体のあちこちに残っている。朝にいたっては、片目だけ蒼かった。中二っぽかった。
「ったく、つかれてんだ、話しかけんな」
「何があったんだ?」
「嗚呼、大冒険だよ。世界を救うための」
「嘘つくんじゃねぇよ」
こんな高木とのいつものやり取りが妙に懐かしかった。嬉しかった。
「アーサー。お前、眠くないのか?」
「眠いわよ。まったく、何時間戦い通しだったと思ってんの?」
時間に換算して、約五時間ほどではなかろうか。まあ、体感時間のため、どうともいえないが。
こうして、俺と、俺の中の《覇》を巡る話は、幕を閉じる。俺のその後、誰と恋人同士になったか、なんていうのは、また別の話しである。あるいは、何かの機会に語ることになるかもしれない。
今、強いて思うことを述べるなら、まあ《殺戮の剱》は《覇》ではなかった。《聖》だったのかもしれないと言うことだ。そう、言うなれば俺は、《聖》の古具使い……
-《覇》の古具使い-完




