153話:《第五階層:炎赫紅帝》
Scene煉巫
私は、木枠に刺さる《炎を纏う剱》を視ていましたわ。なぜなら、あの剱は、一度私の手にあったものですもの。取り返したいですわ。私は、中にいる龍に話しかけます。
「ベリオルグ、いるのでしょう?」
私が名づけたベリオルグと言う名。
(何か用か、緋姫)
「ええ、あの剱。今触れるのは危険ですの?」
(危険か危険でないかといわれると、一般人なら危険だな。しかし、お前ならなんら問題はない。我、紅炎龍を内に宿しているのだ。あの程度の炎に焼かれるわけがあるまい)
そう、ですわね。私なら、あれを抜くことができます。
(緋姫よ、お前は、先代よりも力は劣る。だが、それでも我は、お前に興味を抱いている。紅蓮王には劣るが、緋色の姫よ、お前の力、我に見せつけてくれ!)
分かっていますわ。そう、私は、緋姫。
「蒼と紅。十分にお似合いだと自負しておりますわよ」
私は駆ける。木枠の端まで。そうして、かの《炎を纏う剱》に手を伸ばします。
――キュゥウウ!
炎が一点に集まり、私に放たれます。が、それを右手で捻り潰します。その炎の波動が私に伝わりますわ。身体の内側から焼かれるような。
その感覚に、胸を打たれ、気持ちよさを覚えます。
さあ、私の元にある《緋王朱雀》と《炎を纏う剱》で、私の愛する彼を救いましょう。




