149話:《第五階層:夢見櫓》
Sceneアリス
世界が「蒼」く塗り替えられる。私は、鎌を創造する。
《ラクスヴァの姫神》アリス・フェルミア・ラクスヴァ。かつて、私は、篠宮無双と言う女性に出会った。篠宮の家は、とても強い家でその中でも、無双と言う女性は、頭四つ分ほどずば抜けて強かった。その姿を見て幼い私は、その美しさに憧れた。
それから千数年後、私の憧れた篠宮無双は亡くなった。白城事件と俗に言われた事件により、激闘の末、犯人に斬られなくなったらしい。
それから数十年過ぎた或る日、私は、紫色の髪と瞳を持つ綺麗な少女と出会う。希咲雪美、《帝華》と呼ばれる女性。
「貴方、アリスさん、よね?」
「そうだけど、貴方は?」
初めて話しかけられたとき、私は、怪訝そうに《帝華》を見た。
「私は、王より《帝華》の称号を貰った、希咲雪美と言うものよ」
「《帝華》?あの、《帝華》がこんなに幼い少女だって言うの?」
信じられないような目で彼女を見る。
「私、これでも四十を過ぎているんだけど……」
もっと信じられないような目で見る。彼女は、視線を気にせず、髪をかきあげる。
「ハァ、まったく、アリスちゃん。紅茶」
すると、急に口調が、人が変わったような口調で、懐かしい口調で、私に話しかけた。
「え、急に、何?」
「いいから、早く紅茶。ほら、いつもの」
いつものと言われて、無双に淹れていたお茶しか思い浮かばなかった。
「えっと、はい」
紅茶を淹れ渡す。
「う~ん、この味よね。春夏のとも違うけど、おいしい」
いつもの無双のコメント。この感じ、懐かしい。
「ど、どういう、ことなの?」
「あ~、説明だるいわ。まあ、単純にいうと、今、篠宮無双の魂は、この希咲雪美の身体に入って……。まあ、簡単に言えば、転生ってやつよ」
転生ってやつよって、
「転生って、神様じゃないと出来ないとか言うやつなんじゃなかったっけ?確か、他人の魂を自分の中に入れることは魂の器が壊れるからとか」
「よく知ってんじゃない。姉妹とか兄弟なら別だけど、それ以外の人間の魂は、波長のあう人じゃないと無理なの。ほんで、私は、この身体に居れるのよ」
そんな馬鹿げたことが……まあ、無双なら何でもありね。
「それよりも、朱葉って知ってるわよね」
無双の親友の一人だ。
「その子を救ってやってくれない?《夢見櫓》ってのを壊して欲しいの」
それが、私と、数千年来の友、篠宮無双と、数百年来の友、《帝華》希咲雪美との約束である。
さあ、壊そう、あの櫓を。さあ、壊そう、あの鐘を。約束を果たすために……




