145話:《第三階層:紅魔殿》
Scene煉巫
私が階段を登りきると皆、息を切らせていましたわ。どうやら、一般の方には、少し気温が高いようです。私は、高温の土地で育ったせいもあってか、まったく、それどころか快適で心地よいくらいですわ。清二様もまったく平気なようですが。
「このフロアは、《紅蓮地獄》か?」
紅蓮地獄ですって?
「あら、紅蓮地獄なら冷えてないとおかしいのではなくて?」
私は、単純に疑問を口にしますわ。
「ああ、そうだな。紅蓮地獄は、極寒で皮膚が破れ流血し、それが蓮の華に似ているから紅蓮地獄と言うとか」
清二様が補足説明してくださいます。
「どちらかと言うと、これは、万魔殿という感じですわね」
おどろおどろしいそんな雰囲気。そして、何より、私の第六感を刺激する気配。あちらこちらに獣とはいいがたい、妖魔の雰囲気。
「いや、この場合は、紅魔殿と書いて《パンデモニウム》だろうな」
清二様の言葉。
「紅魔殿ですの?」
「万魔殿は、万、すべての魔物が巣食う土地と言う意味でつけられた名だが、ここには、おそらく、」
現れる紅の魔物の大群。そうですわね。全ての魔物ではなく、
「紅の魔物の巣食う土地、ですわね」
私は、長刀《緋王朱雀》を抜く。抜くと言っても、普通の鞘ではなく、蝶番がついているので、抜くではなく外すなのですが。
「《緋姫》の力、存分に発揮しますわよ。《緋王朱雀》!」
《緋姫》と《緋王》は互いに反応をしますわ。《緋王朱雀》が紅に光を放ちます。
「瞬閃菖蒲」
そして、一秒後には、満二百ほどの紅の魔物は、全て切り裂かれ血飛沫が撒き散らされます。
「あらあら、汚いですわね」
私は、呟きながら、刀についた血を払い、鞘に収めました。皆さん、呆然としていらっしゃいましたが、階段が見えると、自然と、上っていくことになりました。




