142話:《第二階層:蒼天礼拝堂》
階段を登るとそこは、広い礼拝堂があった。この部屋は、
「洗礼室か」
深紅さんが呟く。
「オレが前に来たときとは構造が微妙に違っているのか?」
「どういうことです?」
会長が代表して聞いた。
「いや、前に来た時は、二階は、《蒼天深窓》と呼ばれるフロアだったのだが、明らかに様子が違う」
「礼拝堂って感じですわね」
煉巫の言うとおり、まさしく礼拝堂だ。十字架や教壇、色とりどりのステンドグラス。ただ、一点気になった。ステンドグラスの絵が、おかしい。一つ一つの反射の仕方が、不規則すぎる。まるで、光が生き物のようになっている。
「《洗礼神奏》」
深紅さんが呟いた。俺は、その言葉に驚愕する。
「洗礼神奏?!それって、まさか、」
教典神奏第六楽曲。神の奏でた曲。それは、第一から第六まである。第一楽曲讃美神奏。第二楽曲結合神奏。第三楽曲夢零神奏。第四楽曲天神神奏。第五楽曲魔境神奏。第六楽曲洗礼神奏。第七楽曲幸福神奏。これらは、全て、神がその心を移したものといわれている。
「教典第六楽曲洗礼神奏。まさか、《古具》を媒体に、あれを呼び出す気ですか?!」
「ああ、そのまさかだ」
洗礼。全てを清めし力。本来の意味とは違うのだが、この場合には、そのような意味がある。そして、教典第六楽曲洗礼神奏は、古具の力を清め、そして、神の使い《精霊》を呼び出すつもりなのだ。
「どうするんですか。そんなもん相手に出来ませんよ!」
「そんなこと言ってもやるしかねぇだろ?つべこべいってんなよ。拳一発でどうにかなったさっきとは桁が違う」
桁が大分違うだろう。俺が知っている《精霊》の力は、神の分身ともいえる。一撃でその世界を喰い殺すらしい。何故、俺が知っているかと言うと、それを説明するには聖についての説明が必要だ。
蒼刃聖。第六龍人種にして、全世界共通存在。生物学名称:精霊。うちの妹は、ある世界では、精霊だったのだ。そのため、世界全てに聖が存在した。ゆえに、彼女の死は、因果律を調整せざる終えなくなった。それゆえ、精霊の力は知っている。危険すぎると。




