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《覇》の古具使い  作者: 桃姫
終焉編
142/159

141話:《第一階層:蒼天回廊》

 夢見櫓(ゆめみやぐら)。それは、名の通り、夢を見させる櫓。この塔のどこかにあるとされるそれは、ある人物に、夢を見させ続けている。夢の世界に取り込むため、その人物の時は止まる。夢で永遠の時を過ごす。その人を眠らせたのは治療のため。いわばコールドスリープ。そして治療は終わった。だが、この塔の主は、その前に亡くなり、夢見櫓を解くことが出来ず、塔は、この地に封印されてしまった。アリスは、これを解くために、塔が眠ると思われるこの地に来ていたそうだ。アリス・フェルミア・ラクスヴァと言うのが本名らしい。何人だよ。

「ラクスヴァと言うと、ラクスヴァ姫国のラクスヴァなのかしら?」

煉巫の問い。姫国。姫の国。

「あら、紅い娘は、ラクスヴァをご存知?」

「私は、アルノフィア公国出身ですわ。隣国の名前くらいは聞いたことがありますわ」

アルノフィア?聞いたことの無い国だ。

「龍神が言っていたわ。自分に似た存在が、第六龍人種を連れてきたと。あなた、この世界の人間じゃないのね?」

白羅が言う。この世界の人間じゃないということは、因果律を隔てた並行世界の人間と言うことか。やはり存在するのだろうか。

「ええ、私は、三縞に連れられこの世界へ来たものですわ。きっと貴方が必要になるからと。そして来てみれば、清二様と出会えました。これは運命、きっと、清二様が私を必要としていたのですわね」

嗚呼、何か面倒な展開になったのでスルー。

「ですが、《姫神》が自ら出向くとは、まったくもって思いもしませんでしたわ。公務はよろしいので?国も大変ですのに」

姫神?《姫神来光》のことか?

「無駄話はそこまでだな。おい、篠宮、あれに気づいてるか?」

「あれ?」

深紅さんは気づいているようだが、こいつが気づいていないなら他の人も気づいていないだろう。

「ほう、あれに気づいたのか?流石、頭が切れる。いや、索敵範囲が広いって感じだな」

あの言い方、まさかとは思うが、

「深紅さん、あれのこと知っていたんですか」

「いや、嵌ってから思い出した。このフロアは《蒼天回廊》と言ってな」

「霧を起点に、そこから足を踏み入れたものは、《無限回廊》に閉じ込められるってことッスかね?」

俺が言っていたあれとは、霧のことだ。さっきから幾度も霧の壁を通っている。繰り返すこと二十数回。

「コイツは、塔の主の許しがない侵入者を捕らえる罠だ」

まったく面倒くさい罠にかかっちまったもんだ。

「完全に異世界に飛ばす式の罠だからな、どうにも脱出のしようが無い」

そうか。仕方ない。なら、

――トクン

心音が高鳴り、《蒼刻》を発動する。

「おい、何をする気だ?」

「ちょっ、清二君?何事?」

「どうかしましたか?」

「何だ?」

皆が次々に反応するが、俺は聞いていない。力を高め、そして、拳を地面に思いっきり叩きつけた。

――パリィイイン!

そして空間が割れる。

「思い出した。無双も同じことやってたな」

そう深紅さんが呟いたと同時に、目の前に次の階への階段が現れる。


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