13話:事故
午前の生徒会が終わり、今日は解散だという。俺は、いつも通りの帰り道を歩いていた。何気ない光景。この時間は、人通りが少ない。だからこそ、目立つ。子供が横断歩道を歩いていた。ふと右を見ると、トラックが。
――居眠り運転……
不意に、そう感じ取る。赤信号をスピードを緩めず突っ込んでくる。
「危ねぇ!」
俺のもうダッシュ。心臓が飛び上がる。
――間に合うか?いや、間に合わせる!
地面を踏みしめ、駆け抜ける。接触するまで時間がないだろう。不意に、背後で、突風が吹いたかのように、体が前に進む。ギリギリで子供を抱えながら反対車線を転がり超え、向こう側へ渡る。トラックは、運転手がギリギリで目を覚まし、俺の飛び込みに気がついたのか、ハンドルを切ったようだ。
――ガシャン!
トラックがガードレールをぶち破る。
「大丈夫だったか?」
「う、うん。アリガトー、お兄ちゃん」
屈託のない笑顔。一安心。
「おい、糞餓鬼!どこ見てやがんだ!」
自分の居眠りを棚に上げ、俺に怒鳴る。
「どこ見てんだはこっちの台詞だ。居眠り運転しやがって。この子を轢く所だったんだぞ!」
俺の怒声に男は、子供と自分のやりかけてしまったことに気がつき、ハッとした表情になる。信号は、今、黄色になり、青になろうとしていた。遠くから、サイレンが聞こえてきた。
一週間にして、二度の取調べを受けた少年。などと言う不名誉な称号を警察の受付に与えられた俺だ。一応、傷害事件と、事故は管轄が違ったので、警官たちとは初対面だったが、受付は同じ人だったので、呆れた反応をされた。
取調べから解放された俺は、よろよろの足取りで、帰宅を果たした。




