138話:止まる世界
朝、俺は目を覚ました。しかし、どうにも外が暗い。カーテンを開けるが、空は暗い。雲が空を覆っている。だが、きっとそれだけではない。まだ、太陽が出ていない。部屋の時計に目をやる。時刻は二時三十分。丑三つ時。不吉なっていうか、不気味な時間に目を覚ましちまったもんだ。そう思いながら、外を見ようとし、異変に気づく。時計が止まっている。時計が壊れているということは無いだろう。夏休みに部屋が半壊したために、新しくなっている。新品同然の時計が止まるなんていうことは無い、と思いたい。よく凝らして外を見ると、鳥が宙に止まっている。完全な静止。
「時が、止まっている?!」
それだけじゃない。外で他におかしなものがある。学校の辺りだろうか。ものすごく大きな塔が見える。あれは、一体?
「青葉君!」
篠宮の声だ。よく見ると、俺の家の前に、会長、副会長、篠宮がいる。俺は、アーサーと白羅の様子を確認してみる。
「アーサー、白羅!」
「清二?何?」
「セイジ、どうかしたの?」
二人とも止まっていないようだ。
「ついてこい、説明は後だ」
俺は、二人を連れて、外へ出た。
「やっぱ、これは、異常現象だよな」
いきなりながら篠宮に聞く。
「え、あ、うん。そうだね」
ところが篠宮はどこか別の方を見ているようだった。会長と副会長もどうやらそのようだ。
「どうした?」
「あ、いや、アーサー君って」
「あ?私がどうかした?」
半寝ぼけ状態でアーサーが対応する。
「いや、なんていうのかしら?女、だったのね」
会長が唖然として語る。そういえば、生徒会メンバーといるときって基本男口調だったな。未だに男だと思われてたのか。
「まあ、それは置いておくとして、アレ、何かやばそうッスね」
俺は、塔を指して言う。
「おそらくあの塔の時計が古具ですわね。そして、他にも何かしらの仕掛けがあると思いますわ」
背後から煉巫の声がした。
「様子を見たところ、古具使いと聖剱使い、第六龍人種、第五鬼人種は、時が止まっていないようですわ」
「調べてくれたのか?」
「ええ、清二様のために全身全霊を尽くしてまいりました」
さて、つまりは、特殊な力を持った人間は時が止まっていない。それはわざとか?いや、違うだろう。あの塔、それが鍵になっている気がする。
「どう動くかな」
「まずは、塔に行って見なくては話にならないかもしれませんね」
副会長の言葉に、俺たちは、塔へと向かうことにした。




