136話:《蒼》い記憶
ダリオス・ヘンミーと言う存在と目的、居場所を知ってから早数週間。今だ奴等の動きに変化は無い。いや、そもそもダリオスにこれ以上の仲間がいるかどうかすら分からない。情報があまりにも少なすぎる。
「動かないわけには行かないだろうな。俺も」
そして、仲間達も。今回に限っては、全員で対応しなくては終わること出来ない戦いになるだろう。それほどまでに敵は強大だと思われる。何せ、神を殺す《槍》に、ラグナロクで使われた《魔剱》に、龍を殺した《聖剱》。これらが相手の下に揃ってしまっている。相性としては、《槍》に分が悪いのが、生徒会メンバー。《魔剱》に分が悪いのが、アーサーと俺。《聖剱》に分が悪いのが、白羅と煉巫となっている。
《槍》に関しては、言うまでも無く、生徒会メンバーの攻撃はことごとく無効化されるだろう。《魔剱》に関してだが、これは、炎を放射されると、直接攻撃しか能が無い俺やアーサーは分が悪い。龍滅の《聖剱》に関しては、第六龍人種である白羅と煉巫には非常に分が悪い上に、龍の力は、効果が半減以下になるそうだ。
このことから、戦うなら全員でカバーしながら戦わないときついだろう。そして、俺は、俺の力の原点を知らなくてはならないのかもしれない。篠宮が自分の力の原点を知ったように。煉巫が、自分の力の効果を知っているように。
煉巫の力は、超常的回復力。自らの傷は勿論、他人の傷すらも炎が舐め取るように直してくれる。この力は先天的な力で、朱野宮家全員に伝わっているものらしい。
では、俺の力とはなんだろうか。《蒼き力》、《蒼刻》。それは、己の魂より力を生み出し、それを全身に纏う。それは、一体どのような効果がある。それが分からなければならない。
――では、《蒼き力》とは何のための力か。
――では、《蒼き力》で何ができるのか。
――では、《蒼き力》の動作原理は何か。
考えれば考えるほどでてくる疑問点。それらを全て解くことは出来ないだろう。ただ、気になる。
――《蒼刻》とは、己の魂の奥にある《本能》を呼び覚ますため力。鼓動が《蒼》い時を《刻む》力だから《蒼刻》。その力を使ったものは、己の鼓動を伝わる《蒼》が全身に行き、力を一定時間大幅に上げる。その間、攻撃的な思考になることもある。要するに、力を大幅に上げる力。体中を《蒼》が行き渡るため、髪や目の色素が変わって見える。また、全身の穴から蒼が外部へも放出されるため、オーラを纏っているようにも見える。それが《蒼刻》。
俺の脳裏に、説明文のようなものが過ぎった。何のために生まれ、何が出来、どういう動作原理なのかが分かった。
――記憶と言うものは、親から子へと遺伝するものではない。しかし、魂は、遺伝させることができる。例えば、ある一族は、記憶を子へと遺伝させ続け、常なる王家を保っていたこともある。そう言った記憶。それは、この記憶もそうである。《蒼》とは何かが知りたいと思うことで、その魂の枷が外れる。そういうものだ。
記憶の原理。それによるもの。《蒼》なる記憶。これで、全てが分かった。




