130話:絆の末裔
さっきのは何だったのだろうか。青葉君なら色々と推測を立てられたのかもしれないが、生憎と僕はそこまで優秀じゃない。
――今のは、何か、分かるわよね?
再び聞こえる声。僕は返事をする。ちなみに口は動かせないので頭で念じているだけなのだが。
「まったくもって分からないんですが?」
――ったく、《蒼天》の子孫に思考力で負けてちゃ、私のプライドってもんがズタボロなんだけど
「いえ、そんなことを言われたって」
――いい?あんたは、この私、篠宮無双の血を継ぐもの。あんたは、最強の力も最強の速さも最強の鋭さも持っている。だから、あんな糞爺にやられるわけないっての
「でも、僕に力なんて……」
――ある!諦めてんじゃないわよ!解放しなさい!あんたの中の《絆》の力をっ!
心の奥にある何かが疼いた。現れる、数多の古具が。数多の力が。そして、時が動き出す。
眼前に迫った槍を《緋色の衣》が逸らす。そして、《刀工の剣製》で生み出したたくさんの剱が、槍を止めた。そして、《疾風の足》で初老の男の後ろに回る。
「何?」
初老の男が顔をゆがめた。そして、僕の左手には、|《氷魔の鬼剣》《アイス・ソード》がある。右手には|《雷翔の天剣》《ライジング・ソード》。
「それは、何だ?」
「貴方の言うアーティファクトさ」
そう、これはアーティファクト。数々のアーティファクト。《蒼天》の造ったアーティファクトの力。
「そう、貴方には効かないはずのアーティファクトの力だ!」
数多のアーティファクトが彼を襲う。
「グゥッ!」
いくら槍が防御を透過しようと、いくら槍が攻撃を無効化しようと、全てにおけるアーティファクトの連続投下に耐えられはしない!
「ここは、引くとしよう。覚えておれよ、《絆》の魔法使いの末裔よ!」
初老の男は姿を晦ました。




