125話:魔剱―蒼天と煉獄の行方―
Scene清二
煉巫の腕が治ったとき、あれは、炎が出ていたが、あれはあくまで、回復する《魔法》だ。古具でも、炎による再生でも、吸血鬼の不死性でもない。間違いなく《魔法》なのだ。おそらく、彼女は、因果を隔てた、別の世界からの来訪者。それでも《魔剱》を持っている。
「《蒼天の覇者の剱》!」
「クスッ、|《炎を纏う剱》《レヴァンティン》ですわ」
レヴァンティン。まさか、炎の剱か。北欧神話の邪神ロキが作ったとされる剱で、世界樹の天辺に住む雄鶏を倒すのに必要な剱とされている。それ以外にも、ラグナロクの時にスルトが振るった剱、《スルトの剱》と同一視する傾向がある。だから、炎を燈す剱と表されることが多いのだ。
「モード《蒼刻》!」
俺は、《蒼刻》と化す。
「強い感じがビンビンしますわ」
「お前は、斬っても回復するだろう?だったら、」
取り押さえるしかない。
「きゃっ」
レヴァンティンを弾きあげ、しっかりと押さえ込む。
「動くな。動くと、こいつを突き刺し続けるぞ」
いくら回復力が凄くたって、そうなれば回復できない。
「クスッ、この態勢は、まるで行為をしているときのソレのようですね」
「こんな時に冗談か?読めねェ女だ」
まったく動きが先読みできない。
「あらあら、足に怪我がありますわね」
マルクスの浸蝕にやられた傷のことか?煉巫がその傷に手を近づける。
「動かすなよ、弱ってるとこから攻撃か?」
なおも、煉巫は手を近づけ、そして、俺の傷口から光が溢れ、炎へ変わる。刹那、傷が完治していた。
「おいおい、対等な状態で戦わないと気がすまないとか言うタイプか?」
「そんなことはありませんわよ。と言うより、もう、負けを認めておりますゆえ」
負けを認めてる?ソレってどう言うことだ。俺は思わず、顔を近づけ聞く。
――チュッ
?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
「仲直りの口付けですわ。レディーの始めてを奪ったからには、責任、取ってもらいますわよ」
は?いや、待て、何が起きたのか理解できん。と言うより、コイツは結局なんだったんだ?俺は、驚きのあまり、《蒼刻》を解いていた。
「せ、せせ、せせっ、清二ぃぃいいい!」
突如、俺の背後から聞こえた師の声。白羅さん、何を怒ってますやら……
「人が心配してきてあげたのに、て、てて、敵と、キスしてるってどういうことよ!」
「いや、これは、ちがっ!」
俺が言い訳をしようとしたその時に、
「いつまでその女の上に乗ってんの、セイジ」
鋭い声で、アーサーに聞かれる。
「いや、こいつ敵だし、動かないように」
そう言って、押さえを強くしようと、《蒼天の覇者の剱》から手を放し、手でも押さえようとする。
「言い訳?」
ものすごい鋭い声に手が滑り、ふにっとやわらかいものに触れる。
「ひゃっ、もう、キスをしたからって、これ以上は、まだ早いのではありませんか?」
俺は恐る恐る目を煉巫の方へ向ける。この手が触れたのは、煉巫の胸だった。乳房とも言う。
「わ、悪ぃ、わざとじゃ」
――ヒュゥン!
頭上を何かが横切る。正確には、先ほどまで、俺の首があったところを。そして、慌てて頭を下げたため、顔は、先ほどまで手があったところへと落ちる。
「いい加減にしなさい!」
白羅の声が聞こえるが、いい加減にして欲しいのはこっちだっつーの!




