124話:魔剱―朱天の龍の巫女―
Scene煉巫
私が、今までの人生でもっとも昂揚をしたのはいつのことだったでしょうか。それは思い出せないくらい遠い昔だったのでしょう。生まれながらにして、《朱天の龍》を宿していた私には、恐怖と言うものが潜在的に存在しているせいで、戦いの喜びがもてませんでした。ですが、今この場においては、楽しみたい。それは、私の奥の何かが、あの殿方に反応しているから、だと思いますわ。
「騎士道と言うものを持っている人とは、あまり殺し合いたくはありませんわね」
騎士道。私の家にも持つものはたくさんいました。いずれも、その道を貫き通そうとする執念と誠実さを持っている、時には頭がおかしいのではないかと思うぐらいに誠実でしたわ。それが、どうしようもなく嫌いでした。
「《Collbrande.E.X.》!」
アーサー・ペンドラゴンと名乗る彼女は、剱を抜きます。その刀身の眩さは、目が眩むほど。
「|《紅炎》《プロミネンス》!」
炎を撃ち放ちます。炎は彼女に向かって一直線に伸び、それを、彼女は、切り裂いてしまいます。
「|《黒蛇》《ダークネス》!」
切り裂かれた炎が、蛇のごとく彼女の剱に絡みます。そして、
「|《爆鎖》《バーニング》!」
爆ぜ飛びますわ!
「切り裂け、《Collbrande.E.X.》ァアアア!」
ま、まさか、
「爆炎を切り裂いたと言うのですか?!」
凄い。まさに、
「敬意を払うに値しますわ。ですから、この一撃をあげます」
そう、この現状で、もっとも強い攻撃をお見舞いしてあげますわ!
「|《太陽霊域》《クリムゾン・エリア》!!」
その言葉と共に、世界は灼熱の世界に変わります。
「さあさあ、この世界で燃え果てなさいな!」
昂揚。まさに気持ちが高まっている。
「負けてたまるかぁああ!」
彼女は、立ち向かってきます。勇敢にして、勇猛なそんな雰囲気に呑まれ、私は動けません。
「貰った!」
そして、左腕が切り飛び、血が噴出します。痛みよりも先の思考が、
「あ~あ、ドレスが真っ赤になっちゃいましたわ」
「なっ、何コイツ。斬られてるのに」
彼女も怯えているようですわ。少しゾクゾクします。
「ええ、痛い。痛いですわ」
私は、切り飛ばされた腕を拾い、切り口にくっつけます。すると切り口から炎が上がり傷一つない状態に戻ります。ですが、あくまでそれは身体だけ、ドレスは、また買い直しですわね。
「ば、化け物?!」
彼女の悲痛の叫びに、私の全身に震えを感じます。それは、怒りでも、悲しみでもなく、悦び、快感。
「クスッ、いい。いいですわ。この感じ。とっても気持ちいですわ!」
この快感、この悦びを、もっと、もっと、味わいたいですわ!




