123話:魔剱―騎士対姫巫女―
俺は、ボロボロの体を引きずりながら、《柊公園》の出口へ向かっていた。そこに、アーサーが駆けつける。
「セイジ、大丈夫だった?」
どことなく、いつもよりも神秘的な雰囲気のアーサーに見とれるが、それは一瞬だった。背後にどこからともなく現れた気配。おぞましくも温かい、そんな気配。俺は、振り向く。そこに居たのは、朱色の髪と紅の瞳を持つ女性。瞳は大きく、目元の泣きぼくろが特徴的。また、その整った顔立ちもさることながら、身体も大和撫子のように整っている。そして、服装も特徴的だ。パーティードレス。それも、純白の。襟元にある薔薇の飾り。シルクの手袋。全てにおいて、パーティーから抜け出してきた姫様のよう。ある一点を除いては、だが。それは、腰元に提げられた紅色の剱。禍々しいオーラを発する剱。間違いなく魔剱。
「貴方、強そうね。随分とボロボロだけど、私の相手をしてくださる?」
俺に向けられた言葉。だが、答えたのはアーサー。
「貴方の相手は、セイジがするまでもない。私がやってやるわよ!」
アーサーが女口調で言っている。そのことに驚く。こいつ、戦闘時なのに女口調のままなのか。
「貴方相手なら、この子を抜くまでもなさそうです」
そういいながら、炎の羽を顕す。あの羽、まるで、龍の羽。
「私は、炎の龍を宿す第六龍人種ですわ」
第六龍人種、だと。それは、白羅と同じ。
「龍、か。相手にとって不足なし。私は、Arthur・Pendragon。龍を統べる騎士よ!」
ペンドラゴンは、「竜の頭」と言う意味だと聞いたことがあったな。
「その心意気。よろしい。では、私も名乗りましょう。朱野宮煉巫。緋姫ですわ」
姫?
「緋色の姫と書き《ひめ》と読むのです」
緋姫。何故か俺は、それを知っている。受け継がれし、回復の力を持つ血族。
「さあ、はじめましょうか、私たちの殺し合いを」
妖艶な笑みとともに煉巫が動き出す。




