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《覇》の古具使い  作者: 桃姫
魔剱編
120/159

119話:魔剱―反撃のバライド―

 しかし、Collbrandeがバライドの体を貫くことはなかった。

「これはッ、」

「クソッ、やはり、アーサー・ペンドラゴンは強い」

体に当たる直前に、何かに弾き飛ばされた。

「|《霊縛の深緑》《ウィップ・グリーン》って言う、私のアーティファクトだよ、アーサー・ペンドラゴン」

古具?!コイツ、魔剱と古具を使うのか?!

「驚くことはないだろ?私たち魔剱使いには、《因子》は必要がないのだから」

初めて聞いた。魔剱使いに《因子》が必要ないなんていう事実を。

「さて、コイツは、形勢逆転ってやつだよ」

バライドが生み出すのは、緑色の鞭。

「教えてあげよう。私は、元来、剣術よりも鞭のほうが得意だったんだ。そして、この鞭は、伸縮自在の鞭。効果は、弟の剣に似ているが、アーサー、君は、この動きについてこられるかな?」

鞭が、地を這う蛇のごとく、私へと迫る。それを、私は、地面ごと切り裂く。もはや、セイジの部屋は跡形もないが、まあ我慢してもらおう。幸いこの部屋の下は、いつも食事を食べる部屋で、今は人が居ないし、第一、セイジの母は、父と旅行中。白羅も帰郷中と、この家には誰一人居ない。

「それにしてもグラムがやられるのは予想外だった。さすがは、苗字にドラゴンが入っているだけのことはあるね」

その言葉を聴いて、私の感想は、勉強不足だと思った。

「クスッ」

思わず笑ってしまう。だって、

「セイジも勘違いしていたようだから仕方ないけれど、《Pendragon》は苗字じゃ無い。Pendragonは、アーサー王の父が承った称号だ」

そして、意味は、《龍の頭》、即ち、《龍を統べし者》。

「オレは、あくまでその称号を勝手に名乗っているに過ぎない」

そう、それでも、俺は、《龍を統べし者》。

「だが、この称号に恥じぬ戦いを、この名に恥じぬ戦いをするつもりだぜ」

男口調でそう言い放つ。

「ふっ、強がりを!」

バライドは、再び鞭を放つ。そして、その鞭先が分かれ、二つの鞭が別方向から襲い来る。それを、ExcaliburとCollbrandeで払いのける。

「無駄だっ!」

しかし、鞭は、曲がり、再びこちらへ向かってくる。

「手を封じたら剣は振るえないだろ!」

鞭が私の腕を縛る。そこから妙な力を感じる。これが、《ウィップ・グリーン》。腕に奇妙な紋様が走る。まるで呪いのような。

「この鞭は、敵の動きを封じる鞭。縛られた相手は、その箇所を封じられるのだよ!」

これは、かなり、まずい。腕を動かそうとするたびに痛みがかける。

「下種なまねしやがって」

私は、負けるの、かしら……?

「ふっ、アーサー・ペンドラゴン。お前が終われば、次は、先ほどの歩く図書館君だ」

「セイジに手を出す気?!」

セイジは、

「まあ、今頃マルクスに殺されているかも知れないがな!」

そんなわけない!セイジが負けるわけがない!

「さあ、とどめと行こうか!」

バライドの鞭が私をめがけて飛んでくる。

――負けられない、負けるわけには行かない。セイジ!

そう、セイジが好きだから。私は、セイジが好きだから、負けられない。セイジのために


――それほど、力を欲しいかい?


 脳に直接声が響いた。この声、セイジ?セイジによく似た声。


――ならば、聖なる王の名に敬意を示し、僕の力を貸してあげよう


 誰なんだ?この声。


――キミは、僕の力を受け入れるかい?


 受け入れる。それで私が勝てるなら。


――なら、(ぼく)の力を渡そう。


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