119話:魔剱―反撃のバライド―
しかし、Collbrandeがバライドの体を貫くことはなかった。
「これはッ、」
「クソッ、やはり、アーサー・ペンドラゴンは強い」
体に当たる直前に、何かに弾き飛ばされた。
「|《霊縛の深緑》《ウィップ・グリーン》って言う、私のアーティファクトだよ、アーサー・ペンドラゴン」
古具?!コイツ、魔剱と古具を使うのか?!
「驚くことはないだろ?私たち魔剱使いには、《因子》は必要がないのだから」
初めて聞いた。魔剱使いに《因子》が必要ないなんていう事実を。
「さて、コイツは、形勢逆転ってやつだよ」
バライドが生み出すのは、緑色の鞭。
「教えてあげよう。私は、元来、剣術よりも鞭のほうが得意だったんだ。そして、この鞭は、伸縮自在の鞭。効果は、弟の剣に似ているが、アーサー、君は、この動きについてこられるかな?」
鞭が、地を這う蛇のごとく、私へと迫る。それを、私は、地面ごと切り裂く。もはや、セイジの部屋は跡形もないが、まあ我慢してもらおう。幸いこの部屋の下は、いつも食事を食べる部屋で、今は人が居ないし、第一、セイジの母は、父と旅行中。白羅も帰郷中と、この家には誰一人居ない。
「それにしてもグラムがやられるのは予想外だった。さすがは、苗字にドラゴンが入っているだけのことはあるね」
その言葉を聴いて、私の感想は、勉強不足だと思った。
「クスッ」
思わず笑ってしまう。だって、
「セイジも勘違いしていたようだから仕方ないけれど、《Pendragon》は苗字じゃ無い。Pendragonは、アーサー王の父が承った称号だ」
そして、意味は、《龍の頭》、即ち、《龍を統べし者》。
「オレは、あくまでその称号を勝手に名乗っているに過ぎない」
そう、それでも、俺は、《龍を統べし者》。
「だが、この称号に恥じぬ戦いを、この名に恥じぬ戦いをするつもりだぜ」
男口調でそう言い放つ。
「ふっ、強がりを!」
バライドは、再び鞭を放つ。そして、その鞭先が分かれ、二つの鞭が別方向から襲い来る。それを、ExcaliburとCollbrandeで払いのける。
「無駄だっ!」
しかし、鞭は、曲がり、再びこちらへ向かってくる。
「手を封じたら剣は振るえないだろ!」
鞭が私の腕を縛る。そこから妙な力を感じる。これが、《ウィップ・グリーン》。腕に奇妙な紋様が走る。まるで呪いのような。
「この鞭は、敵の動きを封じる鞭。縛られた相手は、その箇所を封じられるのだよ!」
これは、かなり、まずい。腕を動かそうとするたびに痛みがかける。
「下種なまねしやがって」
私は、負けるの、かしら……?
「ふっ、アーサー・ペンドラゴン。お前が終われば、次は、先ほどの歩く図書館君だ」
「セイジに手を出す気?!」
セイジは、
「まあ、今頃マルクスに殺されているかも知れないがな!」
そんなわけない!セイジが負けるわけがない!
「さあ、とどめと行こうか!」
バライドの鞭が私をめがけて飛んでくる。
――負けられない、負けるわけには行かない。セイジ!
そう、セイジが好きだから。私は、セイジが好きだから、負けられない。セイジのために
――それほど、力を欲しいかい?
脳に直接声が響いた。この声、セイジ?セイジによく似た声。
――ならば、聖なる王の名に敬意を示し、僕の力を貸してあげよう
誰なんだ?この声。
――キミは、僕の力を受け入れるかい?
受け入れる。それで私が勝てるなら。
――なら、神の力を渡そう。




