103話:炎色反応
「ちょっ、清二君?いきなり」
俺に押し倒されながらも、抵抗はしない。理由は分からないが、会長のその判断は正解だ。俺は、左手で生み出した《殺戮の剱》で、ベッドの廊下側にある脚を切断する。ベッドが傾いた瞬間、
――ドゴン!
と大きな爆発が起きる。爆風によりベッドが揺れ、起き上がる。そのベッドが、俺と会長を衝撃と爆炎から護ってくれた。
「大丈夫ッスか?」
「え、ええ。でも、今のは?」
おそらくは、
「爆弾ですね。しかも、普通のではない。火薬を使っているわけでもなさそうですし、臭いも焦げ臭いだけなので、化学薬品の使用はありそうにないッス」
まあ、化学薬品ならば、炎色反応も変わってくるだろう。だから、これほどまでに綺麗なオレンジ色の炎はまずありえない。物が燃えているのだ。少なくとも炎の色は、ところどころ違ってくるだろう。しかし、何かを燃やしているのに同じ色の炎のものを俺は、最近見た気がした。それは、「龍王の遺産」の炎。つまり、これもまた、古具かそれに順ずる何かの不思議な力なのではないだろうか。だが、直接炎を放ったわけではないはずなので、爆発物を設置する系の古具?
「ちょっ、考えてる場合じゃなくて逃げた方がよくない?」
会長の言葉に、俺は、一先ず思考を停止させ、《殺戮の剱》を生み出す。
そして、久々に、声を聞く。
「おい、敵の位置を察知とかできるか?」
《出来ないこともないな。まあ、察知するのはお前だが》
剱の意思は、やり方を提示する。
「死の風よ!」
死の風をセンサーのようにし、探る。それは、風に感覚を同調させるということだ。集中力を使う。
「こちらに向かってくる人数は、四人、いや、六人か」
「え?」
会長の唖然としているのを目にも留めず、俺は、扉を切り裂き、なるべく人のいないほうへ走る。
「ちょっと、どこに……」
「あの襲撃の仕方から見て、敵は外にいる。そして、爆発で隙をついて会長を狙うか、爆発で皆を会長の部屋に集めて、そちらに注目している間に、残りの二人のどちらかを狙うかだ」
もはや、普段の言葉遣いみたく「ッス」なんてつけてないが、緊急時だ。
「会長、二人が居るのは?」
「食堂!」
俺は、会長を引っ張りながら、食堂へと急いだ。




