100話:人を見定める
Scene秋世
私は、人を見る目と言うものを人並以上に持っていると思っています。それは、嘘ではないはず。何故ならば、私を含めて、秋文君もあの姉さんも、人並み以上にパーティーに参加させられ、いやと言うほど、色んな人を見ていたからです。私たちを利用する人、私に惹かれてくる人。様々な人を見たけれど、全てが、心に闇を、悪意を持っていた。しかし、一昨日出逢ったあの人は、眩いほどの善意しか持ち合わせていない人でした。私のことを美しいと感じている感情も悪意ではなく善意。見た目も格好いいと思う。でも、決してそれだけではなく、私の心を照らしてくれるあの人の、見た目にも中身にも心を奪われている。それが自分でも分かってしまっている。それがたまらなくもどかしい。
そして、朝、登校すると、いつも、私は、孤高だった。誰からも話しかけられなかったのに、今日は、ある女子生徒が寄ってきた。
「ねえ、天龍寺さん!昨日のあの人って誰なの?」
その質問を皆が聞きたがっていたかのように、皆頷く。
「あの人は、私の護衛なの。名前は、青葉清二さん」
皆が「そうなんだ~」と返事をする。
「護衛ってさ、すごい人なんだよな」
男子生徒も話に雑じってくる。
「ええ、凄く強い人ですよ」
「マジか……。もしかしてフミのゆってたすげぇ人ってその人?」
フミとは秋文君のことだろう。秋文君もあの姉さんも社交性に長けていて、すぐに人と仲良くなれてしまう。私は、友達一人作ることが出来ないのだ。いや、作らないという方が正確かもしれません。友達などと言う、自分を裏切ることがある存在を近くに置きたくないのだ。でも、それが本心かどうか、それは、私がよく知っている。私は恐かったのだ。他人と言う、考えていることの分からない存在が。
「た、たぶん。そうです」
この日、私は、あの人のおかげで、多くのクラスメイトと会話した。それは、きっと、あの人と言う他人でも、考えていることが分からない他人でも、一緒にいたいと思うことがあると教えてもらったから。




