99話:迎え
放課後、俺は、HR終了のチャイムと共に、足早に教室を去った。今日はこの後、秋世を迎えに行かなくてはならない。
「あれ、青葉君、これから会議だよ」
道中篠宮に会った。そういえば、篠宮の話が昨日出てた気がしないでもないが、まあ、それはいいだろう。今は、道を急がなくてはならない。
「すまん、今日は会議に出ない。理由は会長から聞いてくれ。じゃあ、急ぐから」
俺は、ほぼ駆け足で、昇降口へ向かう。そして、ついた、と思った瞬間。
――ゴチン!
と大きな音を立ててぶつかった。どうやら、下駄箱から靴を取り出そうとしたところに誰かが突っ込んできたようだ。
「痛ぇな。誰だ?」
「痛たたた、すみません。って青葉さんじゃないですか!」
粟木だった。
「おう、粟木。久しぶりだな。あ、俺急ぐから」
そう言って、即行で昇降口から飛び出る。
「ちょっと、まだ何も話してな」
俺は、粟木の声がだんだん遠くなっていくのが分かりながらも、学校を飛び出した。
十分後、俺は、三鷹丘学園付属小学校の校門前に俺はいた。汗はそこまでかいていないが、服が少し乱れていて、不審者に思われる可能性があったので、五分でいける小学校の間にある公園で素早く身だしなみを整えた。これで、あまり怪しまれないはずだ。まあ、もっとも、高校生が小学校の前にいる時点でとても怪しいのだが。
「さて、秋世は」
秋世を探していると、女性が近寄ってきた。教師だろうか。もしかして「変質者がいて生徒が恐がっているので帰ってください」とか言われるのだろうか。
「あの、すみませんが、ここの保護者の方ですか?」
ああ、まずは身分の確認か。
「いえ、保護者ではないのですが、ここの生徒のお一人を保護者さんから迎えに来るように頼まれてまして」
ありのままを告げる。
「えっと、どちらの生徒の?」
「あ、天龍寺秋世の迎えです」
俺の言葉に、少し驚きの表情を見せる。
「あの、天龍寺さんのお迎えですか?えっと、高校生に見えますけど……」
まあ、制服を着ているしな。どうやら天龍寺は、教師達の間ではそれなりに有名な家らしい。
「ええ、まあ、天龍寺カナタさんと秋世さんの面倒を叔母さまから命じられましたので」
――プァアアアン!!
そのときクラクションが鳴る。
「深紅さん?」
「お迎えご苦労さん。秋世は?」
「あ、今お迎えにあがったところなので、まだ合流してません」
「そう。まあ、くれぐれも気をつけて」
言うまでもない。
「分かってますよ」
そうして深紅さんは走り去ってしまった。
「えっと、天龍寺さんのお迎えでしたね。まだクラスの方にいると思うので迎えにいってあげてください。場所は、6-3ですから」
そうして、案内された六年三組。まだ多くの生徒が教室で勉強をしていた。今の小学生って皆こうなのか?俺らは、普通に学校終わったら遊びまくってたけど。
「あ、清二さん」
にこやかな微笑みと共に、秋世が俺のほうを向く。すると、周りの生徒も一斉に俺のほうを見た。
「お、おう。秋世。迎えに来たよ」
秋世は、いそいそと勉強道具を鞄に詰め、俺のほうに歩み寄ってきた。
「それでは帰りましょう、清二さん」
俺は、秋世につれられ教室を後にした。




