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48.こいつに聞くので大丈夫です

皆様、誤字の指摘いつもありがとうございます。

「掲示板内の書き込み」についてですが、複数プレイヤーが投稿している想定なので

・句読点のあり無し

・漢字やひらがなの表記揺れ

に関しては無視していただければ幸いです。

今後も変な誤変換などあると思いますが、なにとぞお見捨てなきようお願いいたします。。。


あと、今回蓮華の発言の一部に突っ込みがあるかと思いますが、次回投稿でそこにも触れます。

※その件に関してでも、いつも通り感想はうぇるかむです。

「とりあえず魔核は回収、と。あれ、二つあるな。ダンジョンボスは特別に人数分の魔核が出るとか?」


 魔核と今迄食べられた人達が身につけていたのであろう装備類、それから大量のギルドカード。


「ドロップ品って言うか……ほぼほぼ犠牲者の遺品ばっかりだな……」


 一通り回収はしてみたものの、どう考えてもギルドカードはギルドに返却して然るべき処理をして貰う必要があるし、装備類も遺品。遺族に返却するなり供養するなりした方が良い気がする。んん、と言うことはドロップ品らしいドロップ品って魔核二個だけなのでは? 苦労に見合わない報酬よ……。


 予想外の収穫と言えばヤテカルの果実。実はヤテカル本人が爆発したあともその場に残っていて、ヴィオラはこれをいくつか持ち帰って毒矢を作ろうと考えているみたい。あとは何かに使えないかと、軽く洗った使用済みのガラス瓶に樹液も詰めていたり。ちょっと表情がほくほくしている。僕が巻き込んだようなものだし、ヴィオラがたくさんお持ち帰り出来るものがあって良かったと思いました、まる。


「黄色い果実を使えばアインくんの猛毒ボディも治るかしら」


 とヴィオラ。僕が戦闘中に弾き飛ばした果実も、ヴィオラはしっかりと回収してくれていたみたい。なるほど、紫果実で染まってしまったなら、黄色果実で解毒出来るのでは、と言う案ですね。僕も大賛成。でも……。


「黄色果実って一個しか見つからなかったよね。これでどうにか出来るのかなあ……」


「そこよね……危険を承知でこの状態のまま王都に戻って、誰かにアドバイスを請うべきかしら」


「確かに。テイマー、薬剤師辺りの意見を聞いてからにしたいね。もしかしたらこの果実を研究することで改良なり量産なりが出来るかもしれないし」


「多分気になるものは一通り回収したわよね? そろそろ六時間経過する頃だけど」


「うん、僕は多分大丈夫かな。ヴィオラはヤテカルの木材は要らないの?」


「一応落ちてた枝なんかは回収してみたけれど、本体は……、さすがにここまでボロボロだとね。内部も焼けてるだろうし。戦利品がドロップする形式のゲームじゃないから、解体時には戦闘中にどこをどう攻撃したのかが重要になってくるじゃない? って考えるとこのゲーム、ボス級モンスターの素材入手ってかなり難しいんじゃないかしら。凄く今更だけど」


「た、確かに……ヤテカルの木材を手に入れる為には、燃やさず傷付けず……? それってかなり難しいね。やるとしたら事前にヤテカルの果実を何個も回収しておいて、毒だけで倒して黄色の果実で解毒する、とか?」


「周回する事前提なのか、ボスの素材が余り出回らないように調整されているのか……何にせよ、ダンジョンの存在が確認されたこと自体が初めてだしデータが少ないわね。今後色々な人が検証してくれることを期待しましょう。……なんて言ってる間にも強制排出メッセージが出たわね。今ログアウトしたら深夜一時半なのよね……ごめんなさい、次の集合は朝七時で良いかしら」


「勿論、ゆっくり休んで。お休みヴィオラ」


 同じタイミングで僕も強制排出され、コクーンから這い出てほっと一息。ボスらしいボスとの対決、事前に合意を得てからのダンジョン攻略ならともかく、完全に巻き込んだ形だったので、負けられないというプレッシャーから正直かなり緊張していた。


「何とかなって本当に良かった……」


 リビングに出ると、洋士が仮想ディスプレイをたくさん開きながら何かしていた。


「ソーネ社からまた電話が来ていたぞ。夜中でもいつでもいいから、時間があるときにすぐに来て欲しいとさ」


「あれ、そうなの? 何だろう……朝迄ログインする予定はないから、本当に先方が良いなら今から行っちゃうけど」


「いつでも良いと言ったのは向こうだし、良いんじゃないのか。準備してこい、一応今から向かうって連絡しといてやるから」


 まあ準備らしい準備もないけれど、一応髪を整えたり――今時はやりのモテ髪にした影響で、出掛けるときはワックスだなんだとセットしなければならなくなった――部屋着から外出着に着替えたり。再びリビングに顔を出す頃には洋士もアウターを着て待っていた。


「よし、行くぞ」


 洋士の一言に僕は頷き、とことこと後ろをついていく。夜中だしタクシーを使う手もあったけれど、前回やらかしたことを考えれば洋士に来て貰わない選択肢はなかった。最近すっかり子供に迷惑をかける親になってしまったなあ……。


   §-§-§


「この度は、誠に申し訳ございませんでした!」


 ソーネ社開発部署エリアで僕達を迎え入れてくれた小林さん。僕の顔を見るなり開口一番謝罪を口にされても、僕には何のことだかさっぱり分からない。


「えっと、小林さん……? 話が全然見えてこないのですが」


「あ、そうですよね……、順を追ってお話しします……。ここではなんですから、まずは先日の部屋迄どうぞ」


 そう言って先導してくれる小林さん。しかし、憔悴しきった表情がとても気になる。前回も疲労感は滲み出ていたけれど、少なくとも生き生きと仕事はしていた筈……。


 例の「関係者以外立ち入り禁止」の扉をくぐり、簡易的な仕切りで区切られた奥、応接セットへと案内された。僕と洋士がソファへと着席するのを確認し、小林さんは深々と頭を下げて、再び謝罪の言葉を口にする。


「この度は、私共の不手際で蓮華様には多大なご迷惑をおかけいたしまして……。その、実は蓮華様のプレイしている状況が、ゲーム開始当初から森でダンジョンに入場する迄、全て配信されておりました」


「配信って、あの配信でしょうか? えっと、僕と行動を共にしているヴィオラとかが行っている?」


「はい、ヴィオラ様と同様の配信でございます。これは言い訳にしかなりませんが、実は公式の配信サイトの運用含め、基本的には全てAIがになっておりまして。グロテスク表現設定などに基づいたR15視聴制限など、幅広くチェック、自動制御を行ってくれる為、私達人間側での目視チェックは殆ど行っていなかったのです」


 そこで小林さんは一旦言葉を切った。一番大事な「勝手に配信されている」と言う部分を打ち明けたからか、心なしか先程よりは顔色はマシになっただろうか。いや、それでも十分に顔色は悪いな。本当に大丈夫だろうか? 僕の配信なんかより小林さんの体調の方が心配なんですが……。


「それを今回、もっと幅広い配信者を紹介出来るようにと『カテゴリ別』や『新規配信者ピックアップ』、『急上昇配信者』と言ったコンテンツを前面に出したトップページへとデザインを一新したのですが……、そこに蓮華様の配信情報が表示されていまして、発覚した次第です」


「なるほど……、僕は今NPC扱いだと思うのですが、何故配信されているのでしょうか?」


「実はそこも私共の方でも分かりかねておりまして。そもそも脳波異常でNPC扱いと言うのが蓮華様以外に前例がございませんので、どこからどこまでがNPC扱いとなり、どこからどこまでがプレイヤーとして認識されているのか、現在調査中といった状況です。ゲーム開始時にキャラメイク画面が出て来たり、初期町からスタートする辺り一部は確実にプレイヤーと同様の扱いとなっているので……、配信についても同様の扱いとなっているのだと思われます」


「何点か質問があります。まず一つ目ですが、僕はシステムメニューが開けないので、設定は変更していません。その上で配信されていると言うことは、そもそもプレイヤーはデフォルトで配信がオンになっていると言うことでしょうか?」


「その通りです。私共も慈善事業ではございません。どこかで資金を回収する必要がありますので、配信者への『投げ銭』に使用する日本円チャージ手数料や、『投げ銭』を日本円に変換する際の手数料などを設けております。やはり配信者人口自体が少ないと、回収出来る金額にも限りがあります。ですから、チュートリアルにて明記した上で、デフォルトで配信をオンにし、配信に対するハードルを下げると言う方法をとっております」


「なるほど、確かにデフォルトでオフのものをわざわざオンにして配信する心理的ハードルは高いですからね。次に二つ目の質問ですが、僕は仕事に利用する為にGoWを始めたのですが、その様子迄配信されていると問題があります。今週の月曜日に仕事相手と合流もしていますが、その辺りの配信状況はどうなっていますか?」


「はい。そちらに関しては弊社の方で確認いたしましたが、女性の方とシヴェフ王国の王都にて合流した際の会話などは配信されてしまっておりまして……。ただしオフィス街に関しましては、全プレイヤー配信がオフになるようになっております。蓮華様も例外ではなく、オフィス街到着後から王都に戻る迄の配信については中断されておりました」


「そうですか。それならまだ何とかなるので大丈夫だと思います。三点目ですが、もしかして僕の配信ってそこそこ人気があったりします?」


「ほぼ無休での常時配信という形なので、個々の配信の同時視聴者数自体はそこまで多くはないのですが、蓮華様の配信ページに対する登録者数及び公式掲示板の盛り上がりは目を見張るものがあります」


「あ、えっと……『公式掲示板』とは一体?」


「っは、失礼いたしました。実は公式掲示板はプレイヤーが自由に新しいスレッド……話題に関する投稿をすることが出来るのですが、人気配信者に関しては個別にスレッドが立てられることが往々にしてあります。蓮華様の場合、プレイを開始してすぐのタイミングで個別スレッドが作成され、現在二スレッド目……つまり千件を優に超える書き込みが行なわれています」


「あー……なるほどつまり、自分で言うのも何ですが僕はそれなりに有名人な訳ですね? だからやたらと変な反応をされていたのか……うん、色々納得しました。あの、これは答えられなければ結構ですが、もしかしてヴィオラも僕が配信をしているって気付いていますか?」


「明確なことは何とも言えませんが、恐らく気付いているかと。ただ、実は蓮華様のスレッドをこちらでも確認してみたのですが、多くのプレイヤーが蓮華様が配信をオフにすることを恐れているようで、蓮華様に対して配信について教えないことが暗黙の了解と言いますか、そのような風潮になっておりました。常時配信状態ですから誰かが蓮華様に忠告をすれば、その様子も配信されてしまいます。そうなれば忠告をした者はあとで何を言われるか分かりませんから、皆が口を噤む。そう言った一種の集団意識が働いているようです」


「分かりました。では最後に一つだけ……僕のコクーンの改造を急いで貰うことは可能でしょうか?」


「それは勿論、はい。今回のことを含め、NPCと言う非常に不便な立場を強いてしまっていることが原因ですから、早急に対応を進めて参ります」


「いえ、それに関しては百%僕が自分で血液をまともに摂取出来ないのが原因なので、ご迷惑をおかけしているのは僕の方です。ただ、何を懸念しているかと言いますと……僕不眠不休でGoWをプレイしすぎて、明らかに不自然だと思うんですよね。自分で配信タイミングを調整出来ればなって思っただけなんですが」


「それに関しては今更だろ。とっくに皆おかしいと思っている」


 今迄沈黙を貫いていた洋士が、突然口を開いたので僕はびっくりした。でもね、洋士。僕さっきから気になっていることがあるんだ。家に帰ってから聞こうと思ったんだけど、君がこのタイミングで口出しするなら聞いちゃうよ?


「まあそうかもしれないけどさ……。あのさ、洋士。お前絶対僕のプレイ状況が配信されていたこと知ってたよね? って言うかなんなら絶対見てたでしょ?」


「っ!? いや、全然そんなことはない、今初めて知ったぞ。あんたが配信していたと知っていたらまっさきに言った筈だ。変なことを口走られても困るからな」


「いや、凄い動揺してるじゃん。だってさ、僕を迎えに来たときに言っていたよね? 『イベントが忙しそうだった』、とか『独り言には気を付けろ』とかさ。小林さん、洋士とシヴェフ王国のイベントについてとか話したことあります?」


「え!? い、いえ、ありませんが……」


「だってさ? イベントについてどこで知ったの? 僕の配信でしょ?」


 洋士はその後も「いや」とか「違う」とかまだ言っていたけれど、そもそも僕を「あんた」って呼んでる段階で自白しているようなもんなんだよ。


「小林さん。知ってて黙っていた人物がここにも一名居ますので配信については気にしないでください。どうせヴィオラに配信許可を出した段階で僕の様子も流れていた訳ですし。まあ、最初に一人で行動していたときになんかおかしいこと発言していないかは気になってますが、それに関してはこいつに聞くので大丈夫です」


 にっこり笑顔で洋士をこいつ呼ばわりしたタイミングで、もう言い逃れは出来ないと洋士は観念しましたとさ。最初から認めていれば良いものを。

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怠け者の自分でも皆様のおかげで「毎日投稿しなければ!!」と頑張れています。

応援がなければ絶対今頃「今日はいいか。つかれたし書けてないしー」とかなってます。いや、本当に。

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吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

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― 新着の感想 ―
[一言] ついつい、見つけてしまって、ズ~~~っと見続けてしまった養いっこ(笑)
[良い点] やっと(運営が)知ったか・・・w そりゃ死にそうな顔色になりますよね・・・ 洋士、生きろ!
[一言] ついに配信バレしたか…にしては凄く思ってたよりもあっさりな反応だな?もうちょっと一悶着あるかなって思ってたけど。
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