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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
本編

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99/145

99.離れない決断に滲ませた我が侭

※ドゥラン侯爵家が二度没落してしまったので/(^o^) \修正しました。

83話を大幅に直し、98話の一部を修正しております。一度目を通して続きをお楽しみください。ご指摘くださった読者様、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

*********************






 ドゥラン侯爵は自ら爵位の返上を申し入れた。お祖父様はそれを受け入れ、文官として国に尽くすよう命じる。それが最大限の温情だった。


 本人が関与しなくとも、家族が国家予算の横領や公爵令嬢毒殺未遂などを起こしている。無罪放免はなかった。家を継ぐ息子も娘もいない以上、侯爵本人を最後に家は絶える。養子を取る方法もあるが、彼はそれを拒んだ。


「我が子や妻の犯した罪を、知らぬふりで生きていく方が辛いのです」


 そう呟いた侯爵は、一気に一回り以上老けた気がする。肩を落とした彼は、祖父に感謝を口にした。文官として国に尽くした彼から、唯一裏切らなかった仕事まで奪うのは酷だ。今までのような重職に就けなくとも、生きていく術や仕事は必要だった。


 征服王と呼ばれ、周辺諸国に恐れられるお祖父様。戦場で出会えば恐ろしい魔神のような存在であっても、感情のない人ではない。何もかも失う哀れな男に、道を残す優しさを示した。


「アンドルリークには大きな貸しがあった。この際だ、生きている間に返してもらおうか」


 戦の申し子のように言われる祖父は、そう言って闊達に笑った。ドゥラン元侯爵夫人の件は、アンドルリーク国との戦の火種になりかねない。お祖父様は火消しを選んだ。燃え広がる前に、小火を消してしまえ、と。疲弊する両国にとって、有難い決断だった。


 私への嫌がらせや夜会で敵に回った家は、相応の罰を与える。それらは貴族会議で執り行うよう、伯母様が命じた。女王クラリーチェ様が、新たに併合した国に決断を委ねる。それは優しさに見えた。


 実際は面倒だから放り出したのだろう。と苦笑いが浮かぶ。だってクラリーチェ様は、細々した調整は苦手だ。貴族との話し合いは、フェルナン卿の方が向いている。


「ルシーが本気で怒る前に帰るとして、アリーはどうする」


 お祖父様は真剣に私に問うている。ルシーがルクレツィア伯母様を示すのは、何となく理解した。愛称の付け方が独特だわ。現実逃避するように、思考が逃げていく。それを引き止めて、考えを纏める。


 ロベルディ本国に行けば、王族として暮らすことになるだろう。肩書きは公爵令嬢でも、お祖父様が特別扱いをすれば王女も同然の扱いを受けるはず。それを望むかと問われたら、私は否と答える。


 謁見の間に集まる貴族派の当主達に交じり、イネスが心配そうな視線を私に向けた。このまま別れて、二度と会えなくなるのでは? そんな懸念が窺える。リディアが殺されて、私もイネスも大切な友人を失った。なのに、私まであの子と離れるの?


 いいえ、それだけじゃない。お父様はもちろん、小公爵であるお兄様も国や領地を離れられない。今の私が「知っている」と表現できる人は少なかった。記憶が完全に戻っていないのだから、仕方ない。その僅かな家族や友人を置いていったら、私は後悔する気がした。


 顔を上げれば、お祖父様の真剣な眼差しが待っていた。クラリーチェ様と同じ、赤紫の瞳は逸らされることがない。私を正面から受け止め、肯定してくれる心地よさがあった。


「私は……家族と暮らしたい」


 短い願いに込められた我が侭は賭けだ。気づいてくれなければ、額面通りに終わる。でも汲み取ってくれるなら……。



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― 新着の感想 ―
[一言] ドゥラン侯爵が真面でよかったです。 まぁもっとも、仕事ばかりで家族を蔑ろにしたせいもあるので、無罪とは言い難いですけどね(^_^;)
[良い点] 変更分も楽しめたので得しました [一言] ついでに81.82話のサッカーボール状態の侯爵と獣の娘がいるので、一度クラリーチェ様の御前に引っ立てられて処分保留の方向でいいですか?
[良い点]  例え立場というものがあってもこんな小さな我儘を許せないようでは名が泣くし器がしれますよ征服王?    まあここで真意を取り違えたり強引になったりするような人物ではないと見ますけどね。  …
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