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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
本編

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90/145

90.罪に相応しい罰を与える

 貴族派の面々は、震えるヴェルディナに意味ありげな視線を送った。トラーゴ伯爵家は娘を勘当していない。家ごと没落させても構わないのだ。女王陛下のお墨付きだった。


 汚れた絨毯の上で「嘘よ、そんなの嫌」と壊れたように繰り返すヴェルディナは理解していない。きっと爪弾きにされるのが罰だと思ったはず。そうではない。殺さなければ何をしてもいいと許可を出した。


 私が苦しんだ二年を倍にして、四年経過したら殺しても咎めない。その意味も隠されていた。たとえ修道院や他国へ逃げ込もうとしても、周囲がそれとなく邪魔をするだろう。表立っては穏やかな笑みを浮かべながら、真綿で首を絞めるように苦しめる。


 残酷な罰だけれど、仕方ないわ。だって、自分の罪を認めなかったんだもの。


 クラリーチェ様はチャンスを与えた。お兄様の断罪に、素直に罪を認めれば良かった。自分が悪かったと謝罪し、頭を下げるべきだ。私は悪くないと突っぱねたから、呟いただけで煽動ではないと逃げを打ったから。


 逆鱗に触れたの。クラリーチェ様は卑怯な手が嫌いだ。真っ直ぐに落ちる滝の水のように、信念を曲げない。自らに厳しい分だけ、特権階級にもそれを求めた。働いた平民が納める税を食い荒らすだけの害虫なら、貴族など一掃してしまうだろう。


「女王陛下、手ぬるいのではありませんか」


 お兄様はこの場で断罪するよう進言する。逃げるのでは? どこかへ駆け込むかもしれない。そんな心配が滲んでいた。


「お兄様、ご安心なさって。この国の頂点に立つ女王陛下が、そうあれと口になさった。どこの貴族が逆らうというの?」


 ぐるりと周囲を見まわし、お兄様はきゅっと唇を噛んだ。その表情に、まだ心配なのだと滲ませて。


「カリストお兄様、私の願いです」


 異論は認めない。被害者である私が望んだ罰でもある。お兄様は静かに一礼した。顔を上げた時には、綺麗に表情を整えている。貴族の仮面を被り、見下す視線を二人の女性へ向けた。


 壊れたように「嘘、嫌」と繰り返すヴェルディナだが、一時的な錯乱だろう。これで壊れるほど繊細な女性なら、あんな方法を使えるはずがなかった。


「それとは別に、ブエノ子爵令嬢の殺害への関与は、裁かねばなるまい」


「それぞれに大切なものを失う罰はいかがでしょう」


 フェルナン卿が口を挟む。その提案は曖昧に聞こえた。大切……何を大切にしているのか。どうやって判断したらいい? それに大切にされているものが「人」だったら。無関係の人を苦しめる可能性もあった。


「クラリーチェ様」


「安心いたせ。見分けは簡単だ」


 私の懸念を見抜いた女王としての顔で、クラリーチェ様は頷いた。ブエノ子爵令嬢リディアを殺した者……示唆した者、命じた者。全員が処罰の対象だった。


「襲撃を示唆したヴェルディナ、命じたフリアン、両名は顔と喉を。連絡役のセルジョ、襲撃に加わった兵士八名は両腕を切断とします」


 襲撃は王宮の兵士だった。金を渡され、疑いもなく命令を遂行する。腐った彼らとセルジョの両腕は、貴族令嬢を殺した罪で切り落とされる。その上で、命じただけの二人から命じた声を奪う。二度と誰かを傷つける命令を出せないように。


 整った外見、穏やかな笑み、優雅な所作、高いプライドと財力に裏打ちされた見栄。それらが貴族を貴族たらしめる。すべて失っても、貴族らしくいられるのかしら。

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― 新着の感想 ―
自害させないのめんどくさそう
[良い点] お見事です(`・ω・´)ゞ女王様に敬礼!! [一言] 小人、顔を洗ったら顔を失う!! だが、目は見えてる!! のっぺらぼう小人のまま、猫作者さんの元へ。
[良い点]  拠り所を喪い尚生き恥を晒さなければならない。  だってこいつら自死できる程気高い精神持ってないだろうし。  逃げようにも柔らかな牢獄のように周囲が計って逃げられなくする訳で。  そのうち…
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