表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/145

76.切り落とすのは確定した

「積み重ねると死刑だが、それでは軽すぎるだろう」


 クラリーチェ様はにやりと笑う。すごく悪い感じで魅力的だ。同性でも見惚れてしまうわ。


「女関係で失敗したのだから、もう懲りたであろう? その無駄に旺盛な性欲と生殖機能を断つとしようか。傷はきちんと塞いでやるぞ。すぐに死ぬなど楽な道はない。フェリノス王家を消滅させる意味でも効果的な処罰だ」


 端的に言えば、切り落とすってことよね。ちらっと視線がそこへ向いてしまった。すぐに不快になって眉を寄せる。ひっと顔を引きつらせた殿方の反応を見る限り、相当痛いみたい。女性にはない器官だから、痛みは想像しか出来ないけれど……そうね、腕を切り落とすのと同じくらいかしら。


 急所と評されるくらいだから、もっと痛いのかも知れない。青ざめたフリアンの股間がじわりと濡れた。謁見の間を汚すなんて、本当に礼儀も覚悟も足りない人だ。


「やれ」


 お父様はきりっとした声で命じるが、騎士達はなぜか役目を押し付け合った。奇妙な状況に首を傾げる。この段階になって同情したの? そんな疑問をお兄様が払拭した。


「騎士の剣は命を預ける大切な相棒であり、主君を守る武器ですから……別の道具を与える許可をいただけますか」


 ああ、なるほど。それで躊躇っていたのね。愛用の剣を緩い下半身の切り落としに使いたくない。その気持ちは理解できる。伯母様は目を見開き、ふぅと息を吐いた。


「これは私の気遣いが足りなかったな。道具を探せ」


 剣ではなく、道具。その表現で、切り落とせれば何でもいいと認識されたらしい。訓練用に刃を引いた短剣や、どう見ても潰す目的の金槌など。様々な道具が並べられた。じっくり眺めた後、伯母様はフェルナン卿に尋ねる。


「どれが効果的だ?」


「罰ならば切れ味の悪い物を、王家断絶を意味するなら潰す物を、情けを掛けるならば切れ味鋭い物。どちらをお選びになっても理に適っています」


 そんな意味があるなんて、知らなかった。見つめる私は緊張していたらしい。伯母様の袖を掴んでいた。慌てて離すが、微笑んだ伯母様に手を戻されてしまう。


「このまま触れておればよい。そなたは大切な妹の忘れ形見だ」


 じわりと伝わる熱を感じて、目の奥が熱くなる。もしお母様が生きておられたら、こんな風に触れてくれたの? 傷ついたと泣く私を抱き締めて、そんな婚約者なら別れてしまいなさいと味方になったかしら。私は味方が欲しかった。だから記憶が必要だった。


 愛された記憶があるなら忘れたくないし、味方をしてくれる人との思い出を手放したくない。感傷に浸る私に、クラリーチェ様は顔を寄せてひそりと囁いた。


「泣きそうなのに堪えるところ、アリッシアにそっくりだ」


 驚いたせいで、涙が止まった。見開いた目に映る伯母様は、からりと明るく笑う。男性の方が多いため、どうしても「痛そう」「あの罰は嫌だ」と同情に近い感情が場を支配した。それを払拭するように、クラリーチェ様の声が響き渡る。


「全部試すのも一興だ」


 え? 驚き過ぎて固まった私の側で、お父様が「うっ」と堪えるような声を漏らした。想像だけで痛かったみたい。私も自分の指や腕を切り落とすイメージが蘇り、痛そうと顔をしかめた。数歩後ろに下がったり、股間を隠す仕草をする貴族もいる。


「承知、いたしました」


 平然と答えたフリでも、フェルナン卿も動揺が声に出る。お兄様に至っては、うわぁ……と表情を歪めて、かつての主君だった王太子を眺めた。


 もごもごと騒がしいフリアンの下半身が露わにされるが、すぐに布で覆われた。まさか、謁見の間で実行するの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  うわぁ‥‥‥うわぁ‥‥‥合掌。  全くこれっぽっちも同情するポイントが無い奴なんで刑の内容自体は相応しい。  ただね‥‥‥男からするとどうしてもね‥‥‥ヒュッてなりますよ。  途中良い話挟…
[良い点] 当然の罰でしょうね。もう必要ないし。
[一言] >「全部試すのも一興だ」 えっ!?全部試すんですか? 切れ味鋭いモノだけは却下すると思ったのですけどね(^_^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ