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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
本編

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30.思わぬ隠し場所から青い表紙

 朝から日記を探し、朝食をご一緒したお父様も加わって書斎の本棚を調べた。これ以上探す場所はないと思ったのに、お父様は本棚の足元にある飾り板を弄る。


「俺の書斎の本棚はここに細工がある。この部屋にも作ったかもしれん」


 覚えていないが、可能性は高い。そう言われて、同じように飾り板を叩いた。高さは膝下程度、ここに本を置いても膝をつかないと取れない。その上、本が埃に塗れたり蹴飛ばしたりする可能性があった。そのため、本棚の下部を、飾り板にしたのだ。


 説明されながら、板の上下左右をぽんぽんと叩く。軽く叩いたら、ぽんと押し出されるように浮くらしい。母の使っていた本棚も同じ仕掛けなので、この部屋に作られたとしたら同じ仕組みだろう。


 いくつか叩いたが反応せず、諦めかけたところで……一番奥の隅にある板が浮き上がった。指を引っ掛けて手前に開く。蝶番で留められた板は、まるで扉のように右へ動いた。


「お父様、ここみたい」


「一番奥か」


 苦笑いするお父様の部屋では、中央の板が左右に開くとか。仕掛けを施した人は、ずいぶん工夫を凝らしたのね。開いた中に手を入れると、数冊の本が入っていた。


 一冊ずつ取り出す。なぜか縦に立てかけた形ではなく、横に積み重ねていた。上から新しく、下へ古くなる日記の山だ。


「日記……青い表紙なのね」


 紺色と呼ぶべきか、深い青の表紙に装飾はなかった。日記である表記があるだけ。全部で六冊あった。一番下から出てきた一冊だけ、白い表紙に金文字だった。


「ここに……あったのか?!」


 お父様は驚いた顔をしたあと、取り繕うように咳をひとつ。それでも落ち着かなかったのか、深呼吸をしてから口を開いた。


「これはアレッシアの日記だ。表紙に見覚えがある」


「お母様の……」


 なぜ私が管理していたのか。一冊しかない白い表紙を手で撫でる。これは後にしましょう。棚の奥に戻し、青い表紙の日記だけを書斎の机に運んだ。


 足が痛いだろうと気遣い、父が本を持った。昨日の躓きならば、もう何ともないのに。お医者様も何もないと仰ったし、サーラに冷やしてもらった。それでも持たせろ、とお父様は譲らない。


 言葉に甘えて、日記を机の上に並べる父の手を見守った。椅子に腰掛け、一番新しい日記を開く。


「こういう場合って、後ろから読むのかしら」


 首を傾げた。新しい日付から遡るか、お父様に相談した半年より前から読むべきか。お父様は少し考え、意見を出した。


「俺なら半年前の日付を読んで、内容によって遡るか決める」


「では、そうしてみましょう」


 一般的には日記は人に読ませるものではない。家族であっても勝手に読むことはなかった。だけれど、自分の記憶がないことで、まるで他人の日記を読むような罪悪感を覚える。さっと真ん中あたりを開き、日付を確認した。ここは夜会の数週間前みたい。


 ぱらぱらと大量に遡り、この日記帳の始まりに近い頁に目を通した。ちょうど半年ほど前だ。お父様と並んで座り、黙々と読み進める。退室したサーラが戻って、お茶を用意したことにも気づかず……。

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