表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/145

22.敵地に出向かず自陣で迎えうつ

 王妃様とパストラ様のお茶会に私が参加した話は、社交界に一瞬で広まったらしい。というのも、あれから数日でお茶会の誘いが引きも切らない。


 朝食の後で開封する封筒は、高く積まれる。普段は銀のお盆に手紙を載せて運ぶ執事が、束ねて運んできた。優雅に数枚を広げて、どれになさいますか? の状態を保てない量になったのだ。


「俺の仕事の書類ぐらいあるな」


 お父様は大声でからりと笑い、片っ端から封を切るよう指示を出した。開かれた手紙から、ゆっくり目を通す。家名は貴族名鑑で読んだ。けれど、どれが知り合いで関係が深い家なのか。まったく判断がつかなかった。


「参加した方がいい家はありますか?」


「お前の気持ち次第だが、この辺は親戚だから俺が断ろう。それと……アルベルダ伯爵家とブエノ子爵家は、ご令嬢がアリーチェの友人だったな」


 ほぼ同じ年齢で、貴族令嬢が二年通うことを義務付けられた学院で、付き合いがあったらしい。この二人の家名には覚えがある。ピンクに金房のお見舞いカードは、アルベルダ伯爵令嬢から。オレンジのラインが入った香水付きの便箋は、ブエノ子爵令嬢からだった。


 少なくとも嫌な感じはしないし、どちらも丁寧に文字が書かれていた。目覚めてからの短い記憶を辿り、私は二人の名前が入った誘いを手に取る。だが貴族令嬢同士のお茶会となれば、王宮のように父の付き添いは期待できない。


 サーラは味方だが侍女だ。何かあっても、直接の口出しは出来ない。その状態で参加して平気だろうか。不安が胸を重くした。


「アリーチェ。頼むから父を頼れ。そうして黙って我慢するのはやめてくれないか」


 懇願するような響きに、俯いていた視線を上げた。大きな体にややキツイ顔立ち、熊のような人なのに眉尻を下げると雰囲気が変わる。まるで主人に叱られた大型犬みたいだわ。


 ゆっくり息を吐いて、顔を上げた。婚約破棄されたとしても、私は公爵令嬢だわ。この貴族社会で王族に次ぐフロレンティーノ公爵家の娘。危害を加えられる可能性に怯えて俯く必要はない。


「お父様、知恵をお貸しください。このお二人と会って話したいのですが、お茶会にお父様の同行は無理だとわかっております。どのようにしたら」


「ふむ。それなら逆に考えたらいい。全部断って、お前から二人を誘ったらどうだ? 相手の領域に踏み込むのは勇気がいるが、己の手元に誘い出すのは簡単だ」


 ぱちくりと瞬きし、少し考える。この屋敷の一角、客間でも庭でもいい。私が有利になる環境へ、話したい相手を呼べばいい。公爵令嬢ならそれも許されるはず。


「そうします」


「危険がないよう、俺が離れて待機しよう。彼女らの同伴者は侍女一人に限定すれば、当事者のみで話が出来るであろう」


 国政に関わってきた父の意見に頷き、そのように手配するよう指示した。お茶会の準備は執事カミロに任せられる。当日の護衛を兼ねて、侍女サーラが付き添うと決まった。


 先ほどの会話で気になった部分を、そのまま尋ねた。


「お父様、お茶会の日に家にいると仰いましたが、仕事はどうなさるのですか?」


「仕事か……王宮の仕事ならやめてやった。領地の書類だけなら屋敷で片手間に処理できる」


 にやりと悪い顔で笑ったお父様は、公爵閣下というより悪人のよう。やめてやった……つまり、一方的に辞職した。王宮では何の仕事をしていたのか。今頃部下の人が困っていないといいけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
父ちゃんカッケェ~!おもしろい~!続きが気になるけど読み終わるのがもったいないという贅沢ジレンマ 書籍化おめでとうございます^^
[一言] お父様から「向こうのテリトリーに行くのに勇気がいるなら、自分のテリトリーに呼べばいい」とするっと代案が出て来るあたり、貴族同士のお茶会は誰がどこで主催するかより誰が呼ばれて繋がりを作れるかや…
[気になる点] なろう小説だと作品によって貴族のルールがめちゃくちゃなのでよく分からないんだけど、身分が低い者から高位の者に対して招待状を送るのはOKなんですかね?なんか他作品ではアウトなものもあった…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ