表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
書籍化記念

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/145

【9/25、2巻発売記念】思いがけない先客 ***ルーチェ

 町に入ったところで、商隊とはお別れよ。彼らは刈り取った麦を買ったり、持ってきた商品を売ったりするの。商売で訪れる人は、用意された宿舎がある。自警団がある建物の隣だった。そちらへ分かれていく人達に手を振る。


 不具合のあった荷馬車は壊れることなく、無事に町まで走った。ここで修理して帰れば、安心ね。


「よく来たな、疲れただろう。二人とも中へ入りなさい」


 お祖父様が低い声で促す。促されて中に入ったら、思わぬ先客がいた。


「パストラおば様?!」


「お久しぶりね。大きくなったわ」


 パストラおば様はお母様の友人で、元王女様だ。いまは侯爵家を継いで女侯爵様だった。イネスおば様もそうだけれど、いつも微笑んでいる。この一帯は元々枯れた土地で、領地の生産力を増すためにお祖父様が開墾を指導した。お母様に譲ってからは、ここと屋敷を行ったり来たり。


 小さな別荘は木造で、大きな部屋が一つ。上に小さな部屋がいくつかあって、あとから増築した分が少し。三角になった屋根の真下で寝るのが楽しいの。今日もその部屋を用意してあると聞いて、嬉しくてお祖父様に飛びついた。


「昨日からお邪魔しているのよ。もうすぐ夫も帰って来るわ」


 お祖父様はワインを探し始めた。運んできたお土産からワインを出したお父様が「ありますよ」と声を掛ける。今度はグラス探し、これは私も手伝った。パストラおば様はお酒を飲まないので、今夜は私と一緒に休んでくれる。


 おば様の旦那さんが帰ってきて、皆で食事をした。すぐにお酒が出て、干した肉や魚が並んで……大人の飲み会になる。パストラおば様と一緒に二階のさらに上、屋根裏の部屋で寝転がった。立ち上がって歩くには天井が近い。中腰で移動するから、大人は大変みたい。


「おば様はお仕事?」


「ええ、収穫の手伝いをしたくて。ルーチェはどうしたの?」


「お祖父様に聞きたいことがあったの」


 最近の出来事や雑談も交えて話すうちに、ふと口から出てしまった。


「カリスト伯父様は、どうして結婚しないのかしら?」


 パストラおば様はごろりと横になり、屋根を眺めながら大きく息を吐いた。


「マウリシオ様に聞いて。他人の私が教えていい話ではないわ」


 おば様も知っているなら、私の周囲の大人は皆知っていると考えてもいいの? 伯父様は優しいし、仕事もできるし、カッコいい。キラキラした髪も微笑みも好き。絶対にモテると思うの。私だって血が近くなければ、結婚したいくらい素敵だもの。


 並んで転がり、同じように天井へ目を向ける。知りたくてここまで来たけれど、私が知ってもいいのか不安になってきたわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ