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書籍化【完結】私だけが知らない  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
番外編

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(元王太子1)婚約者の交代を望む

 王家ただ一人の男児として生まれ、王位は確定していた。何もしなくても転がり込む。妹は一人いるが、普段から顔も合わさないので興味もなかった。


 婚約者として宛てがわれたのは、面白みのない公爵令嬢だ。アリーチェという響きが気に入らない。それは父上も口にしていた。戦ばかりの蛮族ロベルディの血筋だとか。最悪だ。そんな下賤の血が王家に混じるなど……抗議したものの、この国で一番金を持つ筆頭公爵家の娘だから我慢しろ、と言われた。


 王太子であるこの俺が、我慢? 金をひけらかし、次期王妃の座を買ったのか。母上に追い出してもらおうと話をすれば、とんでもないと怒られた。そういえば、母上もロベルディの出だったな。失敗した。


 見た目は整った顔だが、あのツンとした鼻や澄ました雰囲気が気に入らない。婚約を破棄したいが、金も欲しい。一番の金持ちが王家でないのは、絶対に着服しているんだ。側近達とそんな話で盛り上がり、学院へ入った。


 リベジェス公爵家のカサンドラは、金髪の美しい女性だ。丸みを帯びた体の艶かしさも、微笑んで男を優先する賢さもある。同じ公爵令嬢なら、彼女と婚約したかった。口にしたら、カサンドラは微笑んで身を預ける。


 一夜を共に過ごした翌朝、父上に婚約者の交代を申し出た。だがこの時点で、彼女は砂漠のライサネン王国へ嫁ぐことが決まっていた。公爵令嬢同士、交換できないか。この申し出は、なぜか通らなかった。父上はもちろん、母上も、忌々しいフロレンティーノ公爵も反対する。


 必ず帰ってきますから。涙を流して別れを惜しむカサンドラへ、ティアラを贈った。俺の愛情は婚約者ではなく、カサンドラに向いている。そう示すためだった。


 翌年、婚約者が入学し……思わぬ状況に舌打ちした。あの女、勉強ができるらしい。俺より成績がいいのが気に食わない。成績が張り出された廊下で、腕を組んで壁面を睨みつけた。内容が変わるわけではないが、不満だと全身で表現する。そこへ……愛らしい女性が擦り寄った。


「王太子殿下を立てることも知らないなんて、蛮族の娘はなっていませんわ」


 トラーゴ伯爵令嬢、名をヴェルディナと言った。豊満な肉体はカサンドラと並ぶ。甘い香りがする女に俺は夢中になった。俺を褒め称え、常に一緒にいたいと可愛いことを言う。カサンドラが戻ったら正妃に据えて、ヴェルディナを側妃にしよう。王位を継いだ後なら、父上も文句が言えないはずだった。


 残るは邪魔な婚約者の排除だけだ。呼び出し、無理やりお茶を流し込む。側近が用意した虫を沈めたそれを飲ませる、このアイディアはヴェルディナだった。見せびらかす豪華な私物を奪う案も、すべて。女というのは嫉妬でここまで残酷になるのか、と逆に嬉しく感じた。それだけ俺に惚れている証拠だろう?


 ヴェルディナの望み通り、夜会で婚約破棄も突きつけた。だが公爵のせいで騒ぎが大きくなり、焦って彼女の殺害を決行する。楽に死ねる毒を、カサンドラ経由でヴェルディナが持ち込んだ。その液体をお茶に混ぜて飲ませるよう命じ、失敗を知った。


 いや、飲ませることには成功している。問題はその後だった。中立だった貴族が一斉に背を向け、追い詰められていく。母や妹が裏切ったと知り、隣国の下賤の血を罵った。

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