月夜の舞踏会
「わたしもぶとうかいにいく!」
着飾った両親の前でファニーは叫ぶ。
母が困った子を見るような目でファニーを見た。
「大人しか行けないのよ」
「だいじょうぶよ、わたしもうななさいだもの」
胸を張って告げたが両親は取り合ってくれない。
「もう少し大きくなったらな」
「ふふ。いい子でお留守番していなさい。お願いね」
両親はナニーにファニーを任せて出掛けていく。
「いってらっしゃいませ。さあお嬢様はこちらに」
ファニーはナニーによって子供部屋へと連れ帰られ、食事をしてお風呂に入れられ、ベッドに押し込められる。
「ではおやすみなさいませ」
ぱたんと扉が閉まった途端、ファニーはベッドを飛び出す。
窓に走り寄って窓に張りつく。
窓から見える庭は満月の光に照らされてさながら舞台のようだ。
ふらりと部屋を抜け出す。
庭に出てみればいつの間にかそこは舞踏会の会場で。
いつの間にかファニーは素敵なドレスを着ていた。
素敵な男性がすっと手を差し出す。
「素敵なレディ。一曲踊っていただけませんか?」
「喜んで」
精一杯胸を張って手を重ねた。
そのまま軽やかに踊り出す。
素敵な男性とダンスを踊れるなんて、なんて素敵なことだろう。
夢心地で踊る。
華やかな会場。
耳に心地よい音楽。
きらびやかに踊る男女。
何もかもが夢のようだ。
うっとりとしながら夢見心地に踊る。
くるくるくるくる。
踊り終えて一礼。
「今日の記念に」
男性はまるで月光を紡いだような石を差し出した。
ぽわぽわした意識のままファニーはその石を受け取る。
「ありがとう!」
*
帰ってきた母親がファニーの様子を見に来るとファニーはベッドの中でぐっすりと眠っていた。
「あら楽しい夢でも見ているのかしら?」
眠っているファニーは楽しそうな微笑みを浮かべていた。
「おやすみなさい」
そっと額にキスをして母親は部屋を出ていく。
ファニーは楽しい夢の中。
その手には淡く光る石が握られていた。
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