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その84.無くなって



  無い。



 体育が終わって急いで更衣室に帰ってきた。

 慌ててロッカーの鍵を開けて中を開いた。

 いつもの制服はある。

 財布やケータイ等の貴重品もある。

 なのに。



 ロザリオが。


 無い。



 も、もしかして入れたと思って落としたのかな……。

 四つんばいになって床を懸命に探した。

 情けない姿だとか、汚いだとか、そんな考えは微塵も出ずに。



 無い。



 どうしよう……どうしよう!

 無意識に唇が震える。

 あ、アレはへーじがくれた……アタシとへーじの、き、絆なのに。


 アタシは困惑していた。

 頭が上手く周らず焦る考えばかりが浮かぶ。

 だって無くしたことが無かった。

 だって、文字通り肌身離さず持ち歩いていた。

 たった一回、手放しただけ。

 始めて手放しただけ。

 この一回で、たった一回で。


 だって、だって……。




 後からぞろぞろと入って来たクラスの子達が何事かと不思議そうに私を見ている。


「ね、ねェ。アタシがいつも身に着けてるロザリオ知らない? 赤い奴の……」


 クラスの子達は驚いた表情をしていた。

 アタシがクラスの子にここまで焦っているのを見せるのはもしかしたら初めてかもしれない。

 頼られる事が多いアタシだから、不断は冷静でいる。

 だけど今はなりふり構っていられなかった。

 プライドも何も無い。


 クラスの子達は首を振ったり、知らないと意思表示を示していた。

 

「縁? どうしたの?」

 集団から遅れて顔を出した志保にアタシは慌てて詰め寄る。


「あ、し、志保……ロザリオが、無いの。ねェ知らない? アタシの……ロザリオ」

 アタシの表情を見て志保は躊躇った顔を見せた。

 アタシの顔は、今そんなに酷いのだろうか。


 固まった志保が目を見開くとッバ! と後ろを向いた。

 突然の行動にアタシも慌てて志保が向いた先を見た。

 そこに居たのは。


 茜。


 茶色と言うよりかは薄い赤色の綺麗な長い髪の毛を手で払い。

 アタシに向けていた明るい笑顔を、また向けてくる。


「取り合えず皆で探そうよ? 縁ちゃんの為に、ね? アハハ、私も探すから睨まないでよ志保ちゃん?」

 茜の言葉でクラスの子達もアタシに『大丈夫だよ』と慰めたり。

 『何処まで探したの?』と言って探し始めてくれた。

 クラスの子達の温かさと、不安だった思いが零れ、アタシは涙を流してしまう。


「あ、ありがとう!」

 嬉しくて感謝を溢すアタシにクタスの子達は笑顔を返す。


 良かった、皆優しくて。

 きっと皆で探したらスグに見つかるよね? 茜の一声で動き出してくれたんだ。茜にも感謝しないと。


「茜、ありがとう……」

 茜にお礼の言葉を向ける。

 茜は申し訳無さそうな笑顔を向けてくる。


「ゴメンね、私が外した方が良いなんて言うから」


「ううん、良いんだ。茜は何も間違った事なんて言ってないしね」

 そうだ。

 茜は悪くない。

 今はロザリオを探さなきゃ。



「貴方が……」


 か細い声が後ろで聞こえた。

 声を出したのは志保。 

 アタシを見ずに、志保は茜の方を凝視していた。

 志保とずっと仲良くしているアタシが見た事も無い表情をしていた。

 怒りを込めた睨むような瞳。


「なになにー? 志保ちゃん私に何か言いたい事あるのー?」


「……別に」

無表情のまま睨む志保と対照的に笑顔を絶やさずに志保を見つめる茜。

 何かギスギスした空気があるような気が……?


 志保はフイっと茜から視線を外すと、周りと同じ様にアタシのロザリオを探しだした。

 ……な、なんだろう、嫌な空気だ。


男同士はサッパリしてるとこあるけど女の子同士ってめっさドロドロしてますよね。

ホントそゆとこは怖いですよね。。。(ガクガク)

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