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その82.命より大切で






 ココは女子更衣室。

 次の授業は体育。

 アタシ達は授業の為に体操服に着替えていた。


「さっきはごめんねー、穴見さん」

 そう言って申し訳無さそうに話しかける彼女はアタシのクラスメート。


「アハハ、良いの良いの気にしないで」

 そう言ってアタシは笑みを溢す。

 アタシはさっきまで彼女に頼まれて生徒会室の整理や片付けをしていた。

 彼女は敵対する生徒会の人間だ。

 だけど、だからといって彼女の頼みを無碍むげにするつもりは毛頭無い。

 申し訳無さそうに頼んで来た様子はアタシが風紀委員の人間だという事を解ってだろう。

 それでも頼む人がいなかったのか、というか大きな荷物を運ばなくては行かなくて。

 男も上がらない荷物だった。

 そりゃアタシぐらいしか頼めないよね……。

 アッサリと頼みを聞いた私に意外そうだったが、アタシは会長は気に食わないけど生徒会自体が嫌いというわけじゃ無いし。

 彼等は彼等でしっかりと仕事をしてくれているのは知っている。

 タダ会長がやりすぎだというだけ。

 生徒会にはアタシとこの子しかいなかったし、普通に終わらせることが出来た。



 それに……過去に孤立していた経験があるとクラスの子に話しかけられると変に嬉しくなってしまう……。

 さ、寂しいわけじゃ無いけど頼りにされるのは……嬉しい。



「でも助かったよーありがとねー!」

 明るくお礼を言う彼女の名前は崎島さきしま あかね

 茜はクラスでも男女分け隔てなく人に接する明るいイメージの子。

 そんな彼女なのにアタシはあまり関わる事は無いで居た。

 大人しい志保と常に一緒にいるから、明るい子とは接点が少なかっただけかもだけど。


「良いよ、また何かあったら言ってよ」


「あっりがとー! 生徒会じゃ怖い噂聞いてたけど、 穴見さんってば普通に良い人じゃーん! 生徒会と風紀が争うかもしれないって時だけど、そんな時こそ私達が仲良くしないとねー♪」

 そう言って茜は人懐っこく後ろから抱き着いてくる。


「や、やだ変なトコ触ン無いでよー」


「良いでは無いか良いでは無いかーン♪ 穴見さん胸大きいねー♪」


 後ろから胸やら何やらとベタベタと触ってくる茜に軽く抵抗する素振りを見せるも嬉しかった。

 こんな暴力的なアタシに馴れ馴れしく触れてくる人は少ない。

 何か女子高生っぽい、という当り前の筈の感覚が嬉しかった。


「ゆ、縁……」

 騒いでいるアタシ達に控えめな声が掛けられた。

 視線の先を見ると、そこに志保がいた。

 もうとっくに着替えてアタシを待っていてくれたようだ。


「速く着替えて……行こう?」

 いつも控えめな笑顔を見せてくれる志保の顔が少し暗い。なぜだろう?

 

「え、あ、うん」

 志保の様子がおかしい気がしたけど慌てて服を脱ぎ始める。


「……立花さん、ハロー♪」

 私と接しているように元気な感じで茜は志保に話しかける。


「っ……」

 だけど志保は返事もせずに下を向いた。

 人見知りをする子ではあるけど、人に対して失礼なことをしない志保にしては珍しい。

 

「わ、私……先に行くね」

 そう言うと志保はサッサと行ってしまった。

 本当に……どうしたんだろう?


「あれれー? 私嫌われた?」

 そう言うと困ったように茜は笑う。


「そ、そんな事は無いと思うけど……」  

 あの子が人を嫌いになるというのは聞いた事が無い。

 何か、あったのかな。


 急いで着替えると慌てて志保を追いかけようとした。

 すると突然腕を引っ張られた。

 もう更衣室にはアタシと茜しか居ない。

 つまり、腕を引っ張ったのは茜。

 振り返ると、予想通りニコニコしている茜がいる。


 ゆっくりと茜は口を開いた。

 

「その首から提げてる『ロザリオ』体育するには邪魔なんじゃ無いかなァ?」


「え……」

 絶対に手放さなかった赤いロザリオ。

 どんな時でも見につけていた。 

 体育でも服の中に入れたりして誤魔化していた。

 只純粋に無くしたくないから。

 ずっとずっと身に着けていた。

 私の命より大切な物だから。


「だ、大丈夫だよ。バレた事無いし……」


「駄目だよォー! そういうアクセサリー関連を学校に持ってくるの事態駄目だし? 体育なら尚更~、それに私生徒会だから見ちゃったら報告しなきゃ行けない義務あるしー……」


 そ、それは困る。

 アタシ風紀の人間だし……それに茜が言っている事は正しい。

 間違ってるのはアタシの方だ。


「わ、解った……うん、そうだよね……」

 首からロザリオを外しロッカーに入れた。

 鍵を掛けて閉める。


「……」

 良いのかな……。

 茜ちゃんが言ってる事は間違えて無い、しね……。

 


「じゃー行こうよ縁ちゃん!」

 突然下の名前で呼ばれ、腕を引っ張られる。

 親しみを込められたようで、少し嬉しい。

 


「う、うん」

 手を引かれ釣られて更衣室を出る。

 嬉しさと不安が半分半分。

 大丈夫……だよね。



「………………………………………バァーカ♪」



「え? ゴメン、何て?」

 私の手を引っ張っている茜が小さく溢した声は聞き取れなかった。


「んーん? なんでもないよー」


 …………?

いぇー久しぶりの連続更新! 誰か私を褒めろ!

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