その80.僕の親友はどうしたんだ?
一年生の廊下に来てもミホの姿は見えなかった。
……おかしいな。
写真バラまいてたって言ってたけど。
取り合えず近くにいた後輩に話しかけてみる。
「あー、ゴメンちょっと良いかな?」
「……はい」
そう言って振り返る後輩。
「……」
「……スイマセン勘違いでした」
悠馬だった。
僕は短く謝ってUターン。
か、刀持ってないから解らなかったァァァ!!
「……人の顔見ていきなり逃げ出すって酷いんじゃないですか? 朝倉先輩」
肩を捕まれた。
逃げれなかったか。
力強いなこの子……。
仕方が無い、結局誰かに聞くつもりだったし。
覚悟を決めて振り返るとぎこちない笑みを向ける。
「や、やー偶然だね?」
「貴方が一年生の所に来たのに偶然もクソも無いでしょう、で、何しに来たんですか?」
サッサと本題に入ってくれるのは助かるけど帰れ感出されるのは普通に凹むな。
「……ミホ見なかった」
不満な表情のまま取り合えず聞いて見る。
僕の言葉に悠馬は少し考える素振りを見せた後、思い出したように口を開く。
「ああ……朝倉先輩にくっついているショートカットの女性か……今はもういないがー……少し前まで何やら写真を売ったりバラまいたりしてましたね」
売ったりばら撒いたりしてるショートカット。
間違いなくミホだ。
未曾有事なきミホだ……。
しかし売るならともかくばら撒くって……何やってんだ一体?
「ちなみにばら撒いていた写真」
「……ッブ!」
悠馬が懐から出した写真はとても見覚えのある人物が写っていた。
っていうか。
ばら撒いていたという写真は僕の写真だった。
な、何をバラ撒いてるんだあのバカは!?
不断から考えが読めない子であったが、今回こそは全くもって考えが読めない……僕は何やら心配になってきていた。
ミホは……僕の親友はどうしてしまったんだ?
「ま、貴方も人気なようですし……写真は一部の男性女性の手に渡ったようですね」
女性は嬉しいが男性は嬉しくない。
一体僕の写真なんて何に使う気だ。
いややっぱ知りたくない。
「……大半の写真はアイツが持っていきましたけどね」
呆れたような悠馬の言い方に首を傾げてしまう。
アイツ? アイツって誰だ?
不思議に思っている僕の後ろから突然生暖かい風が吹いた。
ビクゥ!? と体を仰け反らせてしまい、慌てて後ろを振り返った。
「私の事ですよー? へーじさん♪」
後ろには可愛らしいツインテールの少女がいた。
どうやら僕の首筋に息を吹きかけたのはこの子、亜里沙のようだ。
しかもまた、さり気なく心を読まれた。
相変わらずだなエスパー少女め。
「どーしたんですかへーじさん? まさか私に会いに……」
そう言いながら勝手にイヤンイヤン、という具合に喜んでいる。
「君は僕が口に出さなくても解るでしょ……ミホを探しに来たんだよ」
僕の言葉に亜里沙はスグに不満そうな表情へと代わる。
「ぇー知ってますよ? でもちょっとは私に気を使って『君に会いに来た!』とか言ってくれてもバチは当りませんよ?」
「……君に会いに来たんだー」
すべからく棒読み。
「もっと気持ちと愛を込めて♪」
……この子と喋ってたらいつか心が折れるわ。
「じゃ、ミホがいないんなら僕は行くよ、バイバイ二人とも」
サッサと踵を返して二人に背を向ける。
これ以上亜里沙と喋って精神的に疲れるのも悠馬と関わって肉体的にやられるのもゴメンだ。
「あん、へーじさん、付き合い悪いー!」
「さっさと行って下さい」
後ろから二人の正反対の言葉の意味が聞こえてくるがどちらにも対応せず後ろ手に手を振るだけで対応する。
しかし、結局ミホは何処に行ったんだ?
「……ミホさん探すよりモット気に掛けたほうが良い事がありますよ」
「……会長が動いた」
え?
突然後ろから聞こえた二人の言葉はどちらも『心配した』意味合いを向ける言葉だった。
その両方の言葉に反応して僕は慌てて振り返っていた。
振り返った先の二人はすでに僕に背を向けて歩き出していた。
後ろからでも解る亜里沙の楽しそうな背中と後ろからでも真面目な様子が伺える悠馬が並んで一年生達の中に消えていく。
二人とも振り返る事も無く。
今の言葉は……?
どういう事だ?
真意はわからないが二人とも何かを伝えようとしているのは解った。
一体何を伝えたかったのかははっきりと解らないが……。
会長が動いた? 他に気に掛けること? ……朝に縁が言っていた生徒会の人間が動き回ってるのも関係してるのか?
……取り合えず動こう。
ここで突っ立てるよりマシだ。
試合終わりました。入賞です。
私頑張りましたb




