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その78.ブロマイドは一枚千円ー! 一枚千円ー! 縁タン亜里沙タンとのセット3千円もあるよー!!

「昨日は酷い目に合った……」

 僕は多分傍から見たら凄くげんなりとした表情をしているだろう。

 いつものように学校の登校の道を歩いている。

 結局何も浮かばなかった……ど、どないしよう。

 縁の為にも……というより学校が化け物の三竦みで滅茶苦茶にさせない為にも。

 何故僕が一般の生徒の為にまでここまでしなくちゃ……ってソレはもう何回も家で同じ事やったわ。もういいわ……。

 あの後、帰ることは出来たのだが……帰ってきた姉と鉢合わせ。


 弟が変態願望を持ってるような感じに見られたわけで。

 小一時間説教しながらの顔面集中の殴打とか女がやることじゃねェ。

 ぶっちゃけ痛すぎて説教聞いて無かったけど。


 あんな姉に相談するわけにも行かないし……。


 考えあぐねていると、前方に見覚えのあるショートカットが見えた。


 ヤッブェ。朝っぱらからタチの悪いのに引っかかるゾこれ。


 僕のげんなり表情が更に暗くなる。


 同時にミホが振り向いた。

 あの子は何か僕のセンサーでもついてるのか?

 仕方が無いので軽く手を振ってみる。


「オッスーミホー」


「……ッ!?」

 うぇ?

 凄い慌てた表情を見せるとミホが慌てて走り出した。

 ……え? 逃げた!?

 イヤでも勝手に関わってくるのに、ど、どうしたんだ?


 それはそれで結構寂しいんだけどミホさーん!


 ……行っちゃった。

 どうしたんだ一体?


 学校行ったらどうせ同じクラスだし。

 行ったらちょっと話してみよう。


 何故か無意識に足が早足になってしまう。


 ……え、別に気にしないし。

 気にしてないし。

 ちょっと悲しいとか考えてないから!!










「ハーイ! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい!! 昨日現れた奇跡の女神のブロマイド!! 一枚1000円だよー!! 安いよ安いよー! 今なら彼女のプライベート情報をオマケしちゃうよー!!」


 ……校門の前で何商売してんだ。

 って売ってるのは僕の!?


 一年生っぽい子が僕の女装姿の写真を売っていた。


「く、くれ!」「こっちは三枚だ!」

 しかも何商売繁盛してんだ!!

 いつ撮ったんだコラ!!


「ちょ! ちょっとキミは何やってんだー!?」

 慌てて止めに入ろうとすると、一年生がキラキラとした瞳をこっちに向けてきた。


「あ、へーじさんチーッス!! いやー大繁盛っすよー! さすがは我らの情報屋イエー!!」

 この子はミホに良くくっついている新聞部の後輩だ。

 僕も偶に喋る。

 ミホ大好き少年で無駄に明るいのが特徴的だ。

「いやいやいやいや!! 何やってんの君!」


「そーなんスよーいつもならアネさん(ミホ)が率先して商売してんですけどー今回は任されちゃいましたよー何かちょっと様子おかしかったっすケドー」


「チゲーよ! 何でキミが商売してるか聞いてるんじゃねーんだよ!! 何で売ってるんだって言ってんだ! しっかも堂々とー! 風紀か生徒会にブチ殺されちゃうぞ!?」


 そんなことを言ってると遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。


「こるぁーー!! 勝手に商売してんじゃないわよォォ!! 全部没収没収ゥゥゥ!! 百合果さんブロマイドはアタシのだぁー!!」

 本音が出ちゃってるよ縁! 

 しかし相変わらず通る声にすざまじい速さだな。

 ドンドンと近づいてきている。

 無駄に明るい後輩も流石に顔が青ざめる。


「無敵素敵な暴力熱血少女!! コイツはヤッベー! 危険回避で即効ダッシュ! 奪取される前に退散退散!! 

へーじさんお疲れッスー!!」

 荷物をまとめて後輩がサッサと走り去っていった。

 流石はミホの後輩だな……行動が色々と早い。

 しかし後輩君もミホがオカシイと言っていた。


 ……やっぱ何かあったのか?


「へーじー……アンタは買ってないわよね?」

 いつのまにいたのか縁が隣に立っていた。

 なにやらもの凄いジトーッと見てきている。

 嫌々僕が僕の汚点買うわけないでしょ。


「ま、良いけどねー……親族に欲情したら流石に引くわよー」

 だから何で自分で欲情すんだよ!


「大丈夫だっての! どんだけ疑ってんだ!?」


「……冗談はこれくらいにして」

 冗談だったのか。

 結構マジな疑いの目だったと思うんだけど


「へーじ、風紀の奴らが朝から大人数で動き回ってる、気をつけた方がいいかも」

 さっきとは違う真面目な目が僕に向けられる。


「気をつけるって……何を?」

 奴らとは停戦協定中だ。

 何かがあるとは思えないけど。

 あの会長がどれだけクソでも約束を破れば生徒会と一年生が敵に回るわけ出し。

 最初から一年生や生徒会どちらかと手を組んでいたら話は別だけど……まぁ考えすぎだろうけど。

 縁や悠馬が会長と手を組むわけないし。



「……解んないけど何があるか分んないんだし気をつけてね」

 真剣な目でそう言うと縁はサッサと行ってしまった。

 同時にチャイムが鳴る。

 ……流石風紀委員、時間厳守って奴だな。

 僕もサッサと教室に行こう。


「どこだ!? オレの百合果さんブロマイドが売っているという場所はどこだ!? 全部買いだ!

 買いだー!!」


「……何やってんのバカサク」

 縁が消えたと同時にサクが突然現れた。


「っは!? 違うんだ!! これは浮気なんかじゃ……」


「さき行ってるぞー……」

 何か後ろでゴチャゴチャ言っていたがガン無視してサッサと教室に向かう事にした。

 この男の扱いにも慣れたものだ。


Oh金が無い……

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