表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/103

その76.作戦が上手く行かなくても。味方が一人増えたと思ったらマシかな……っていうかスカート慣れてしまった(泣)

 あの後、防音のせいか会長が先の部屋から出てくる事は無かった。

 バレる前にサッサと出るのが先決だと判断して僕達はいそいそとその場を後にした。

 ぶち破ったドアは縁とサクが力技で元に戻しやがった。

 あいつ等本当なんでも有りだな。


「で、で、百合果さん……ああああのへーじについてもうちょっと聞きたい事が……」


「ケ、ケー番とか教えてくれねーかな……と、友達から……」


 今は学校の通路を僕とアリサが並んで歩いて、後ろから最凶兄妹が付いてきている感じだ。


 ……助かったには助かったけど。

 どうしようこの二人、いつまでも付いて来るんだけど。


 アリサも僕にそっと耳打ちしてくる。


「参りましたね……当初の目的は完遂できなかったわけですし、バレる前に速く逃げだすのが得策なんですが……」


 そうなんだよ。

 あの二人多分どこまでも着いてくるぞ?


「ですよね……」

 こそこそしてる僕達に後ろから訝しそうな声が振られた。

 

「何喋ってんのよ、何か気になるわね……」


「そうだぜ、二人で抜け駆け……してる気がする!」



 さ、流石はWバカ! 下手に何にも考えて無いぶん勘がクソやべェ!


「べ、別に抜け駆けなんて! どうやって二人を振り切ろうかなんて話て無いですよ!?」


 アァ……アリサちゃん……無駄に正直なんだから……。


「ムム! この馬鹿が邪魔なんですか!? だったら今から片付けますよ百合果さん!!」


「テメー! 縁! お前百合果ちゃんの邪魔みたいだから消えろコラ! さもねーと俺が消す!!」


 お互い自分は及びじゃないわけが無いみたいに思ってる!?

 何か知らないが勝手に二人がまた戦いだした。


「と、取り合えず今のうちに行きましょうか……」


「そ、そうだね。何か正直なのが効をさしたようだし、もうこいつ等勝手に戦わせておいて良いよ」


 勝手にドンパチ繰り広げている二人を後にして、僕とアリサは学校の外へ向かった。






 僕達は何とか裏の校門まで来る事が出来た。

 ここまでくれば安心だ。

 結局バレたのはあの変態教師だけだし……結果オーライかな?

 ……いや、当初の目的は失敗に終わったんだっけ。

「そんな落ち込まないで下さい。 他の手を考えましょう」

 そう言ってアリサが可愛らしく笑いかけてくる。

 ウムム……やはり恐ろしいまでに可愛い子だ。

 まァ心読めるんだけど。


「アハハ、そんな褒めても何も出ませんよ?」

 ほらみろ。それに別に何も期待してないよ。


「えー、そうなんですか? チューぐらいならオッケーですよォ?」

 そういいながら僕に向かってンー、っと唇を伸ばしてくる。

 そんな様子を見て僕は呆れた表情を作る。

 この子の相手も大分慣れた。


「遠慮しとくよ……今の姿じゃ男女の素敵な関係にはなりえないしね」


「アハハ♪ 確かに百合百合って感じです♪」


 どういう事かは解らないけど、アリサは偉くご機嫌だ。

 怖い目にもあっただろうし、何でこんなに機嫌が良いんだ?


「エヘヘ……へーじさんが私を守ってくれたから……とかじゃ駄目ですか?」

 そう言いながらモジモジとしている。

 しかし、その姿が本当かどうかを見定める技術は残念ながら僕には無い。

 取り合えず、「そうかい」とだけ言っておく。

 そうするとアリサが不満そうな表情へと変わった。


「ッムー……水歩さんの気持ち何となく解った気がします! やっぱり『私達』嘘吐きには、へーじさんは天敵ですね」


 またわけのわからない事を……。

 まァいいや、今は急いで帰ろう。


「じゃぁまた明日ね。本来僕はいないわけだし、今日は帰って作戦会議でもするよ」


「ええ♪ お疲れ様です」


「うん、今日はありがとう。それに怖い目に合わせて悪かったよ」


「それは良いんですよ~」

 少し間を空けてアリサは顔を伏せた。

 長い髪が前に倒れて表情が見えない。

「それに……本当に好きになっちゃいましたから……」


「へ? 何?」

 ゴニョゴニョと言われて何を言ってるか解らない。


「い、良いんです! 本当に聞こえてないみたいですし! 気にしないで下さい! じゃ、じゃあまた明日!!」



「また合いましょうね~! 百・合・果さーん!!」

 態々言われたくも無い言葉を大声で言いながらアリサがブンブンと手を振っている。


 一応お忍びで帰ろうとしうてるんだけどね。

 今更だけど本当なら授業中の時間だからねコレ。


 少しずつ離れていっていると流石に心の声は聞こえて居ないのか、それとも解ってやっているのか。

 アリサは手を振るのを止めない。

 無邪気に小さな子供のように。



 僕が振り返る度に満面の笑みを向けたまま。


 僕が視線から消えるまで手を下げない気だろうか?


 ……変な女装までして、襲われて、結局上手くいかなかったけど。

 それでも。


 亜里沙という少女が。


 良い子だという事は解った。


 何処までも読めない少女だったあの子の存在が。

 良い子だって解ったんだ。

 もう……それで良いじゃないか。

 今日は疲れた。


 ……帰ろう。


 帰ってもう一回やり直しだ。

 何とかしよう。




「おー! 可愛いね彼女! 学校サボってどこ行くの~?」

 街中で突然チャラい男に話しかけられてしまう。


「……忘れてたよ。 ドチキショウどんだけ僕ってば可愛いんだよ……」


「おお、僕っ娘とか超萌えるー!」


「ウルセーよ! もうほっといてよ! 帰らせろ! 僕を帰らせろォォォォォ!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ