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その72.最強女子高生+武器

「うりゃァァァァァ!」

 気合を込めた掛け声で変態覆面を一人蹴り飛ばす。


「ありがたき幸せェェェェ!!」

 悲鳴? と共に覆面が吹っ飛んで行く。

 だけど覆面達はまだワラワラと居る。

 こいつ等アタシ達が見た時より数増えてない!?

 ジリジリと覆面達が近づいてきている。

 手つきがイヤらしい気がする……。


 先頭のリーダーと思わしき赤覆面が(多分)ニタリと笑って見せる。

「フッフッフ! 縁ちゃァーン? 諦めて道を譲るんですなァ!」


「誰が譲るか変態共め!! 百合果さんには指一本触れさせないわよ!」

 とは言っても人数が多いのは確か、変態共が私自身に向かってくるなら血祭りにあげるのは簡単だけど。

 変態達の目的は百合果さんだ、スキを突いて抜こうとしてくる。

 案の定廊下一本だから多少は助かるけど……一気に詰め寄られたら厄介極まりない。

 今はその瞬間を狙っている感じだ。

 中々厄介ね……せめてもうちょっと廊下が狭いか、リーチのある武器があると良いんだけど。


 そんな風に考えていると、後ろから歩く音が聞こえた。


 ……ッ!? 嘘後ろから!?

 慌てて振り返ると、そこに居たのは無愛想な銃刀法違反男。



「……アンタ等何してんだ、そんな所にいては道が通れないだろーが」

 最もな意見がアタシに向けられる。

 っていうかアタシだって好きでンナな事してるわけじゃ無いわよ!!


「うっさいわねー!! 通りたかったらこの馬鹿共どっかやるの手伝いなさいよ!!」

 前の変態共にも意識を向けながら不良一年生に悪態を付いてみせた。


 そんな私に、不良一年生は肩を竦める仕草をしてみせる。

 ……何かコイツ。

 こういう所はへーじに似てるかも。

「……やだね。俺は風紀の奴に味方する気何か無い」


 悪態の付き方まで似てる気がしてきたわね。

 だけど今はコイツにかまってる暇は無い。


「期待してないわよ」

 この男と敵対しているのには変わりないんだし。

 味方をされても寧ろ困るっての。

 悠馬は軽く鼻をフン! と苛立ったように鳴らして見せた後、近くの壁にもたれながら座り込んだ。


「速く終わらせてくれよ熱血バカ女」


「……アンタ。先にぶっ飛ばすわよ?」

 あまりにもフザケタ態度にカチンときてしまう。

 目の前の馬鹿共がいなければ問答無用でぶっ飛ばすのに! って、今は戦っちゃ駄目ってへーじと約束したんだっけ……。

 胸に残るモヤモヤに苛立ちを覚える。


 そんなアタシを見て何を思ったのか知らないれど、悠馬は軽く立ち上がった。

 何よ……やっぱヤル気?

 そんな身構えるアタシなど気にしない様子で悠馬は口を開く。


「フン、ぶっとばされるのは勘弁だな……手を貸す気は無いがー……これぐらいは貸してやる」

 そう言いながら悠馬がアタシの方に向かって何かを投げて見せた。

 反射的に受け取ったそれは。


 刀。


 悠馬がいつも持っている刀だった。


「コレ、良いの?」

 ついマジマジと刀を見つめてしまう。

 っていうかおっも……やっぱ本物なんだ。

 模造刀の可能性もあったけどまさか本物の銃刀法違反だったとは。



「アンタならそれあったら十分だろ?」

 それだけ言うと悠馬は視線をアタシから外し、またズルズルと壁にもたれて座り込んだ。


 ……前にも思った。

 この男は、やっぱり良いやつなのかも知れない。


「ありがとう! 使わせてもらうわね!」


 フン、とまた悠馬が鼻を鳴らしたのが聞こえた気がした。


 再び変態達と対峙する。

 今度は武器を持って。

 柄を抜くと、刃がギラリと光る。

 それを見て威勢の良かった覆面達がたじろいでいた。

 代表するように赤覆面が震える声を溢す。


「ゆ、縁ちゃん! 女の子がそんなの持ったら危ないでしょー! どうせ使えないんだからしまいなさいよォ!」

 使えない? 誰が? 

 赤覆面の言葉にアタシはニタリと笑う。


「アタシの家じゃー長刀、弓矢、刀にヌンチャク何でもござれ! 衛生教育の金持ちお嬢様舐めんじゃないわよ!! アタシに使えない武器なんて無いのよ!!」


「ど、どんな衛生教育ー!?」

 へーじがいない分、赤覆面が突っ込みを返してくれる。


「金持ちお嬢様って……恐ろしく似合わない言葉だな……」

 後ろからも冷めた感じの突っ込みがくる。

 不良一年め……あの男は一言多いのよ!!

 アタシは慣れた手つきで刀を構えると変態達を一瞥する。

 勿論刀の向きは斬れる方向で。

 まァあの変態達だし死にゃしないでしょ。

 変態達は見事にびびってるけど。


「ック! 後方射撃!」

 赤覆面がッバ! と手を挙げると後ろからエアガンを構えた覆面達が勢ぞろいしていた。

 また学校に玩具持ち込みやがって……


「ウハハハハ! 近づかなければ良い話よォォーー!」

 悪者くさい言い方と共に赤覆面が手を下ろす。

 同時に覆面達が引き金に指を掛けた。

 ……変なところで協調性のある軍隊ね。

 そんな事に使うならチーム系統の運動部にでも入れば良いのに……と軽く覆面達の馬鹿さ加減に溜息を零す。


「馬鹿なりに良い考えだと思うけど……」


 アタシに向けて銃弾が放たれた。


「そういう悪役っぽい台詞は、負けフラグってのよ?」

 再びニタリと笑みを零しながら刀を空中で何度か振ってみせる。


 ブンブン! という刀が空を切る音が響く。

 そして私の周りで破片が舞った。

 放たれたBB弾に向けて刀を振り下したのだ。


 飛んで来た全てのBB弾に、だ。


 一瞬空気が固まった。


 固まっている覆面達。

 慌てて我に返った赤覆面が再び掛け声をかける。

「まぐれだ! う、撃て撃て!!」

 焦ったようにエアガンを持つ拳銃部隊がアタシに向けて銃弾を飛ばす。

 私はもう一度刀を振る。

 キンキンキンキン! と刀がBB弾に当る音が響きわたるのに合わせてアタシはクルクルと回る。 

 十数人が飛ばしてきた玉をアタシは逃さずに切り落とす!

 回りながら次々に飛んでくる玉を落としていく。

 

 パラパラと砕けたBB弾がアタシの周りで舞う。

 

 銃撃音が止まるのと共にピタ、と回転を止めると刀を覆面達に向けて見下すように笑って見せる。


「近づいてなくても無駄なのかしら?」


 そんなアタシの姿に赤覆面は覆面から覗く目を大きく見開いていた。

「ん、んなアホな!」

 赤覆面が何故か関西弁になっている。

 覆面達も動揺が隠せて居ないらしい。

「ま、まるで踊っているようだったぞ! 美しい」

「何て恐ろしいお方なんだ!」

「流石我等が縁様! そこに痺れる憧れるゥ!」

「刀がまた似合うなァ ふつくしい!!」


 赤覆面が慌てた表情で怒声を発する。


「き、貴様等どっちの味方だよ!!」


「どちらかと言えば縁様」とか「普通美人の味方だよなァ」とかボソボソと覆面達から聞こえる。

 ……やっぱチームワーク無いかも。


「っ~~~! ええい! 撃ち続ければ彼女が近づく事は無い!! 体力を減らすんだ! 撃て撃て撃てェー!!!」

「イエスもて隊!」と相変わらずダサい掛け声と共に再びアタシに銃が向けられる。


 男達が再び引き金を引いた。


「発想は間違ってないけど、アタシ相手にはちょーっと安直なんじゃない?!」

再び飛んでくる拳銃に合わせて舞うように刀を振るった。

 銃弾が再び弾き返される。

しかし、先程とは違う。


 銃弾は飛んできた方向へ帰っていく。


「?!」


撃った玉がそのまま銃口に帰したのだ。

 ガツン!ガツン!とそこらじゅうで銃口が妙な音を立てている。

「た、隊長ォォォォ!!玉が詰まって銃が使い物になりませんんんんん」


「なななななななななな!? 銃弾を全て同じ銃口に向けて弾き返したというのか!? なんっつー人間離れナナナナ!!」


 刀を構え直し、アタシがその言葉にムッとしてしまう。

「アタシは普通の女の子だっての! ただ風紀委員に熱心なピチピチ女子高生を化け物みたいに呼ぶんじゃないわよ!!」

 後ろの一年生から「っつーか化け物だって言ってんだろうよ……」なんて言葉が聞こえたけど無視!


 

 なんにしても形勢逆転!

 うろたえている赤覆面の様子を見るとあまりにも予想外だったらしい。

 策はエアガン頼みだったのか何かしてくる様子は見えない。

 この通路の広さでの、この刀の長さ! 誰も通させないし誰にもやられないわよ! アタシが負ける要因は……無い!!




「変われ」


 その時、聞きなれた声がした。

 

 覆面達を押しのけてぬっと出てきた大男。

「テメー等じゃ武器持ったアイツ相手にすんのは無理だ」

 その男をアタシは良く知っている。

 覆面達はその男が出てくるのに合わせて場所を作るかのように何歩か下がった。


 アタシの余裕を見せていた瞳は自然と鋭くなる。

 刀を構え直し真っ直ぐに相手を見据えた。

 アタシが何か言う前に赤覆面が大男の名前を呼ぶ。


「サ、サク」



「よう縁、退く気はネェよな?」


「……馬鹿兄貴」

 気安く挨拶をしてくる兄貴に吐き捨てるように言葉だけ溢す。

 今日のこの男は一味違う。

 いつものふざけたオーラが見えない。

 この男と本気の本気で殺り合うのは今回で二度目かな。

 無敗のアタシが始めて負けた男だ。

 ……あの時の事は感謝してるけど勝負としてなら思い出すだけで負けず嫌いなアタシをイラつかせるだけ。


 ……落ち着け。


 刀を肩に乗せて首を軽く鳴らす。

 それにあわせるかのように兄貴も指を鳴らしている。


「……アンタ武器有りのアタシに本気で勝てると思ってんの?」



「寧ろ丁度良いハンデだろーがよ」


「言うじゃない」

 やっぱり明らかに雰囲気が違う。

 裏庭で戦った時も正直長引いていたらどうなっていたか解らない。

 ……弱気になるのは止めよう!!

「かかってきなさいよ! アンタの愛なんざ駒斬りにしてやるわよ!」


「俺と百合果タンのバーニングロードの邪魔すんならぶっ殺すだけだゼェェェ!!」

 何を言っているのか解らないが、怒涛の叫び声を挙げる兄貴に若干気圧される。

 兄貴の後ろの方で「バーニングロードってヴァージンロードの間違いっすかね隊長!」「そんなダサい間違い流石のアホサクでもやらんだろー! きっと意味があるんだって、アッチアッチの道を歩きたいなー、的な」等と言う可哀想な感じの突っ込みが入っているが兄貴の耳に入っているのだろうか……。


「ヴァージンロードを邪魔する奴はぶっ殺すだけだゼェェェ!!」


 っ言い直した!?

 聞こえてたんだ。


 叫び声を挙げながら兄貴がアタシに突っ込んでくる。


「恥かしかったんだ! 素で間違えたんだ!! ダサ! ダサー!」

 覆面達のどよめき等最早兄貴にはもう聞こえて居ない様子。

 これ以上恥を欠かない為なのか百合果さんの愛のせいか切羽詰った感じの表情をしている。

 ……両方かな。


 アタシは刀を構えなおす。


「さァ! 来い!!」

相も変わらず遅い更新です。すいません。

他の小説は友人(絵担当)と共同ですのでもうちょっと出来た出して行きたいなァ。


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