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その64.知りたい情報屋知りたくないサイコメトラー

「追え! 追えー!」

 と、雄叫びを挙げながら変態集団が美少女を追って消えて行った。

 美少女を追って行く変態共の暑苦しい勢いに若干引く。

 いや私がやらせたんだけどさ? そんな必死になるなんて男ってヤダヤダ。

 何て軽く人事。


 美少女が変態共に合わせて意外にもすざまじい速さで逃げて行った事にも軽く焦る。


 逃げ足はっや……。


 集団達が消えた後、一人残された私はアリサちゃんが逃げていった三階の階段へと足を進めた。


 皆が上手いことあっちに行ってくれたからアリサちゃんとは二人っきりになれそうだ。


 ……彼女に聞きたい事がある。

 上手いこと分かれてくれて助かったよ。

 別れて貰うのが目的ではあったんだけどここまで上手く二手に別れてくれるとは思わなかった。



 聞きたい事。

 それは……へーじとの関係。

 知りたい。

 情報こそが力になると思っている私としては、いい加減へーじとの関係を知っておきたい。

 へーじに聞こう、という気持ちもあったのだけれど、彼は私や縁ちゃんと並ぶほどの天邪鬼。

 簡単に答えてくれるとは思ってないしね~?。


 そういえば……今日へーじは休みだ。

 変に優等生なぶん休んでいると目立つ。

 ……? このタイミングで、というのが少し怪しい。

 それもアリサちゃんに聞いたらハッキリするだろう。


 三階まで上がったのは良いけれど、肝心のアリサちゃんは何処に逃げたんだろう?

 流石の私でも逃げてった先の情報まで持ってるわけじゃない。

 三階に上がってすぐに飛び出したのだけギリギリ見えたし、三階のどこかにはいると思うんだけれど……。


 暫く廊下を歩いていると、どこかからすすり泣く声が聞こえた。


 ……? 何?


 耳をすませると、ある一つの教室からその声が聞こえた。

 この教室は、理科室?


 そっと理科室のドアを開けてみる。

 その先には暗がりが広がっていた。

 暗がりの中では小さな泣き声が響き渡っていた。


 震える声が教室の隅から聞こえた。

 その聞き覚えのある声は私が探していた人物。




「……アリサちゃん?」





 私の顔を確認した瞬間、アリサちゃんの顔は真っ青に染まった。


 驚き方が違う。

 私が期待していたソレとは違った。

 変態達を追わせたのは半ばやり返しの気持ちがあったからだ。

 だけど、それでも少し懲らしめてやるってつもりぐらい。

 冗談ぐらいの気持ちで受け取ってくれると思っていたのに。


 何よりも……アリサちゃんが、私が『敵』だと認識した程の少女が。

 この程度でやられるわけが無い……私の思い過ごしだったの?

 過大評価してたつもりは無かった。


 アリサちゃんの表情は蒼白、目に涙を溜めていた。

 女の子を泣かしてしまった、という感覚が胸糞悪さへと変わる。


「だ、大丈夫?」


「……ッ!」

 私が心配の一言と共に一歩歩み寄ると、アリサちゃんはビクッと体を揺らした。

 ……驚かせるつもりは無かったんだけど。

 アリサちゃんがこれぐらいで泣くなんて思わなかった……私が買いかぶってただけ?

 耳を塞いで必死で縮こまっている彼女は本当に私と敵対していたあの子?


 何もいえなくて固まっていると、アリサちゃんがゆっくりと顔を挙げた。


 赤い目や涙の痕がいたたまれない。


「貴方、ですか……」

 その落胆した言葉は、まるで別の人だったら良かったのに、と言っているような言葉だった。

 ……だったら誰なら良かったのかな。君は。



===========================





 そこに居たのは私の宿敵の水歩さんだった。

 いつもの張り付いた笑みは無く、私を見て呆然としているようだ。

 フフ……滑稽ですか? 

 あそこまで貴方を追い詰めた私が咽び泣いているんですから……。


 人の心が読める。

 世界の常識を無視した私の能力。

 その人の思いも過去も攻撃も作戦も全てを見透かす。

 魔女と言われる程のある種、最強の力とも私は思っている。

 誰にでも勝てるような……ゲームで言うところのバグ技みたいなレベルの物。

 そんな反則的な私の能力。

 その唯一の弱点が能力自身なんですから。

 皮肉も良い所……。


 頭に響く言葉は水歩さんが来た事で大分マシになった。


 目の前の人物が私を意識している、というだけで周りの遠くの雑音は薄くなる。

 遠くで誰かが私の名前を呼ぶのと、目の前の人が私の名前を呼ぶのではどっちが良く聞こえるか……という差でしかないけど……。


 あなたに助けられるなんてホント皮肉ですけど。


 ゆっくりと顔を挙げて何とか笑ってみた。


 水歩さんの表情にいつもの笑みは無かった。

 その理由も勝手に頭に響いてきてしまう。


 知りたくないことまでも知ってしまう。


 水歩さん? 貴方は何でも知りたがる。


 だからムカツクの。


 本当に。


 何もしらないくせに。

  










「私を……探していたようですね……」

 心がそういっていたから解った。

 私の言葉に水歩さんは困惑した表情を見せただけで何も言わない。


 水歩さんの心が動揺していた。

 この程度の事で泣くような子じゃないだろうと思われていた。

 全力で向かわなければヤられると思って向かって来てくれたのに。

 あの時言ったように全力で私に向かってきてくれたのに、こんな情けない姿を見せたのには……少し申し訳なくは思います。


「……発作のような物です、気にしないで下さい」

 私は冷たくそう言った。

 嘘だ。

 ただ心が読めて沢山の声が頭に響いたと正直に言っても信じて貰えないと思っただけ。

 


 冷静に見える見た目に反して、水歩さんの心の中はグチャグチャで何を考えているかは特定しづらい状態。

 だけど、弱みを突くやり方は私も貴方も同じですよね?

 この姿を見られたのは私のミス。

 何を言われても……覚悟はしておこう。


「……そーなんだ」

 水歩さんの短い言葉は少し意外だった。

 もと……何か言われると思ってたんですけどね……。


 まぁ、何も言わなくても心の声が聞こえるんですから関係無いんですけどね。


 グチャグチャの心は突然冷静に。

 透き通った一言だけが、綺麗に私の頭の中に響いた。


『……嘘吐きに嘘使ってもモロバレなだけなんだけどね~』


 ……え?

 

 頭に響いた言葉は、意外な言葉だった。

 私に対する敵対する冷たい声じゃなくて、ドア越しから私の名前を呼んだような温かい言葉。


 呆けている私を他所に、水歩さんは私に近づくと私のすぐ隣でしゃがみ込んだ。


「行こっかアリサちゃん」

 短い言葉と共に私に肩を貸して持上げた。


「わ、私をどうするつもりですか?」

 多少怯えたような声になってしまったのは、大勢の『声』の所に連れて行かれたらどうしようと思ってしまったからだ。

 これ以上沢山の『声』に近づいたら頭が壊れてしまいそうで怖かった。


「んー? 百合果って子のトコにだよん? 取り合えず一人で居るよりは友達が近くに居る方が良いんじゃない?」

 水歩さんは、私の不安を消し去るように温かい言葉で簡単にそう言った。

 一瞬疑ってしまったが、嘘じゃないのはサイコメトラーのせいで嫌でも解る。


「ど、どうして……」

 何でも解る私でも、予想外の事で反射的に疑問をぶつけていた。

 そんな驚いている私に水歩さんはアッハッハ、と不安を吹き飛ばすように短く笑った。


「私は可愛い子をイジるのは好きだけど~……苛める趣味は無いのよん?」

 そう言って、水歩さんは私にウィンクして見せた。

 今私が見せていたのは最大級の弱みだった筈。

 水歩さんが私を『敵』だと思ったのなら……そこを突くのがベスト。

 水歩さんに弱みを見られた時点で私の負け。


 ……なんのつもりですか。


 貴方と私は敵なんですよ?

 『敵』だったら情けなんてかけない。

 私だったら……そうするな。


 私に肩を貸して歩き出そうとしている水歩さんを見上げた。

 負の心は、見えない。


「…………」


「ん? 何?」


「何でも……無いです」

 悪意の無い瞳を見て、スグに顔を伏せた


 …………。


 何も……知らない……クセに。


この新たな話を作るとき、新たなキャラ達は誰かと似ているようで正反対な存在を作れたら良いなと思い。

その最たる例が


ミホ←→アリサ


です。


他のキャラ達の相反する存在も、もし話の中で解って貰えて行けたら良いな、と思っています。

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